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ミドリムシが地球を救う/ユーグレナ 出雲充氏

《と   き》 2014年1月20日 
《講  師 》 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲充氏
《コーディネーター》 放送大学 名誉教授 森谷正規氏

 

 「イノベーションフォーラム」2013年度後期第4回は、株式会社ユーグレナの出雲充さんの『ミドリムシが地球を救う』というお話であった。

ユーグレナの和名がミドリムシであるが、しばしば青虫と間違えられるというユーモラスな紹介から始まった。これは海藻の一種であり、今はユーグレナが健康食品として広く販売していて評判になっているので、間違える人は少なくなっているだろう。
 この会社の発端から話が始まったが、それは出雲さんが東京大学に在籍中の1998年にバングラデシュを訪問して、貧困に喘ぐ子供たちを何とかしてやらねばというのが、ミドリムシの研究の発端であるという。
 ミドリムシは、59種もの栄養素を持っていて、体内への吸収が非常に良い。これを何とかして大量に栽培出来ないかと、大学院に進んで研究に取り組んだ。このミドリムシ自体は、ユニークな面白いものだと早くから注目されていて、世界で研究者も少なくない。ところが、研究室でごくわずかな量の生産に止まっていた。
 そこで出雲さんは大量に生産しないと意味がないと、苦闘しながら研究開発を続けて、屋外の大型のタンクの中で栽培する方法を考え出した。その苦労話はほとんど無かったのだが、大変な苦労は、大量生産にメドが立ってからである。開発成果を持って、企業化しないかと、さまざまな企業を回り始めた。
 ところが、どの会社も相手にしてくれない。来る日も来る日も会社回りを続けて、それは500社に達した。ついに断念せざるを得ないかと諦め始めたときに、それは面白いと言ってくれた企業が現れた。伊藤忠商事である。メーカーはすべて無視して、商事会社が強い関心を持ってくれたというのは、考えさせられることだ。出雲さんは、この問題を強い口調で言った。
伊藤忠という大企業が企業化を支援するということになると、次々に協力企業が現れてくる。今では、JX日鉱日石エネルギー、日立製作所、清水建設、ANAなどと資本提携して、共同研究パートナーになっている。
出雲さんは、ユーグレナの経営理念を熱烈に語った。「人と地球を健康にする」という大きな理想であり、その具体的な可能性を挙げたが、健康食品の販売は手初めであり、極めて大量の安く作って貧しい国の子供たちに栄養化たっぷりの食糧を提供することが出来る。
 また、水中の成分を取り込むユーグレナの性質を活かして、環境浄化技術が可能になる。
 最も期待しているのが、ユーグレナをバイオマスとしてエネルギーにする、特に目指しているのが航空機の燃料である。現在は、沖縄の石垣島で大量生産しているのだが、まずは石垣島に飛ぶ航空便に利用したいという夢を語った。
学生時代に、壮大な夢を抱いて、ひたすらその実現に向けて大学で研究を続けてきた出雲さんに、皆が感動した。
 それにしても、なにやら良く分からないが大きな可能性を秘めた技術、それに熱中している若者に、大いに賛同する企業が500社に一社では寂しい。これからは増えて欲しいものである。
 なお、ユーグレナは東大発のベンチャー企業であり、本社は東京大学の本郷キャンパスにある。大学発のベンチャー企業が、ようやく本格的に成長し始めた。この問題については、東京大学でこれを推進している各務茂夫教授が、どのような仕組みであり、如何に活動しているかを詳しく話された。大学発ベンチャー企業の可能性に注目したいものである。

(文責 森谷正規)


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