明日の指針を求め合う、産業・分野横断的な感動的出会いの機会と場となることを願って

代表 松尾 隆

 新経営研究会は、去る1982年、わが国製造業の主として経営者層、技術・製品開発と“ものづくり” の第一線で指導的立場にあった方々、そして当時の私どもの危機感・問題意識に深く共感していただいたアカデミアの方々が、産業と分野、企業規模の大小、世代の枠を取り払って相語らい、今後 「日本独自の技術・製品開発とものづくり」 「日本の製造業の在り方」 を求め合っていく「機会」と「場」の必要を痛感し合って発足させた、同志会です。

 お陰様で弊会は本年11月、発足40周年目に入らせていただき、今日では各企業の経営トップ・技術系幹部の方々に止まらず、大学や国の研究機関などで最先端の研究・開発に携わっておられる方々をはじめ、宮大工棟梁、染色家、刀匠など匠の方々など、広い分野の方々が産業と分野を横断して交流し合っています。

 思い返せば、新経営研究会が発足して今日に至る39年間、私たちは実に様々な重大な出来事に直面して来ました。先ず新経営研究会発足直後、1985年9月のプラザ合意に端を発し、極めて短期間に起こった超円高と日本の景気減速。それまで 1ドル240円前後を推移していた円ドルレートは当時の日本政府の円高容認もあって年末に対ドル200円台、1986年 190円〜180円、1987年末 円高は一気に進んで対ドル 120円台、1995年4月 遂に79円25銭を記録して日本経済は崖っ淵に立ったのでした。続いて1989年 ベルリンの壁崩壊と1991年、当時、誰も想像も出来なかったソビエト連邦の崩壊、同年日本のバブル崩壊、そして何よりも米国の国防総省の資金提供により1967年に研究が開始されたインターネットの出現と1900年代後半、アメリカの国家戦略によって出現した “デジタル化によるものづくりと製造業” という画期的技術革新と産業革命。加えてこれら円高とデジタル化を背景に急速に新興工業国として台頭して来た韓国と台湾を含む中国。これは日本の国際競争力を急速に凋落させ、世界の産業構造と経済地図を一変させた歴史的事件でした。続く2008年リーマンショック、2011年 1万5900人の命を奪い、行方不明2530人、福島第一原発のメルトダウンを起した最大遡上高40mの巨大津波を伴った観測史上最大の東日本大震災、そしてこの度の新型コロナウイルス感染症の地球規模の拡大…大きなものだけを拾い上げてみてもこれだけの重大事件に直面した39年でしたが、振り返ってみれば長かったようでもあり、瞬く間のことであったようにも思います。

 一時、日本の製造業はジェットコースターで急降下していくような幻覚を覚えるような日々が続いていましたが、思えばよくここまで持ちこたえ、回復に近いところまで漕ぎ着けることが出来たものです。
 改めて、先に奇跡と言われた日本の戦後復興を成し遂げ、今またこの度苦境に陥った日本の製造業を担い、舵を取ってこられた日本の為政者、経営者、技術開発とマーケティングを担われてきた諸先輩と同僚諸氏、そして後に続いて命を燃やして頑張ってくれている後輩諸氏に、最大の敬意と感謝の念を表するばかりです。
 このような諸先輩と同僚と後輩、そして歴史を持てたことはわれわれの誇りです。
 今回の新型コロナウイルス感染症が及ばす影響も、必ずわれわれは克服できる筈です。

 時代は 「AI」と 「IoT」が一体となって進むデジタル革新の時代を迎え、しかも生命科学、脳科学、医学、新素材開発、量子科学技術など、科学技術本流の画期的変化の時代を迎え、加えて環境・資源・エネルギー問題、中国などアジアの躍進、ひいては文化のアイデンティティーに関わる極めて重要な問題に直面する一方、今世界で再拡大の様相を見せ始めている新型コロナウイルス感染症による影響に、ポストコロナの時代を含め、自らはもちろん、如何に今後の世界に日本ならではの技術的・文化的貢献を果たせるか、問われています。

 そして、このデジタル化時代を迎えた今日、日本は再び、これまでに培って来たわが国ならではの “ものづくり” の理念と美意識、経験を柱に、再び「日本ならではの“ものづくり”の世界」を再創出していける絶好のチャンスを迎えている、と私は思っています。
 と同時に、私たちは今、 “命” と “心”、“文化” と “美意識”、そして “時間” ということへの、深い、豊かな意識の回復を求められていると確信しています。

 この未曾有の時代環境激変の今日、私たちは産業と分野、企業規模の大小、国と文化を横断して今日の各々のビジョンと挑戦的試みを交流し、感動的出会いの機会と場を開き合って参りたい。
 その感動的出会いが既成の通念を打ち破って新しい世界に目を開かせ、明日の指針と希望を開き、交友範囲の拡大、ひいては人間形成への掛け替えのない機会となる、と確信する次第です。


 企業の命とは、それは規模の大小、ビジネスの如何を問わず、それは企業が持つ夢と精神と誇り、この企業あるいはこの組織をこうあらしめたいと願うトップの強烈な欲求、その実現への揺るぎない意思である、と確信する次第です。技術・製品・企業文化というものも、この初めにある企業のそしてそこに携わる人々の夢と思い、精神、誇りの結晶に他ならない。

 新経営研究会が今後日本の新たな技術開発とものづくり、わが国製造業のイノベーションを求め合う産業・分野横断的な勉強会であると同時に、その実現を求め合う同志会でありたい、と切に願う次第です。

 皆様のご支援を賜りますよう、幾重にもお願い申し上げてやみません。(新経営研究会 代表 松尾隆)

 

 

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