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大型電力貯蔵用リチウムイオン電池の開発と普及を目指して/エリーパワー 吉田博一社長

《と   き》 2013年9月25日 
《講  師 》 エリーパワー株式会社 代表取締役社長 吉田博一氏
《コーディネーター》 放送大学 名誉教授 森谷正規氏

 

 2013年度前期「イノベーションフォーラム」第6回は、エリーパワーの代表取締役社長である吉田博一さんから、「大型電力貯蔵用リチウムイオン電池の開発と普及を目指して」というお話をいただいた。

 このエリーパワーは、平成18年に創業された企業であり、まさにベンチャー企業であるが、資本金が310億円で、これまでにはない最大級の規模のベンチャー企業の出発である。お話の全体を通して、じつにスケールの大きい内容であるのに非常に驚いて、さらに、エネルギー革新に寄与したいという強い想いから出発した創業であるのに強く感動した。
リチウムイオン電池は、日本が世界に先駆けて開発したのだが、いまのもっぱら携帯情報機器用の小型の電池では、サムスンなど海外企業に追いつかれ、生産量では抜かれている。だが、これからの本命は、乗用車用の中型と定置用の大型、超大型電池であり、来るべきエネルギー革命の中核になると予想されるものだ。その新しい需要では、日本が再び大きくリードすると期待できると、心強いお話であった。
 そして技術開発もさることながら、吉田さんの経営戦略がじつに見事であり、まさしくベンチャー企業が持つべき革新性に溢れている。驚くことは、吉田さんは住友銀行(現三井住友銀行)の副頭取を務めた銀行マンであり、技術はシロウトであったことだ。後に述べるが、シロウトの恐るべき力を発揮された創業であり、これは最も注目すべき点である。
 この創業における革新性に溢れた経営戦略は、多岐にわたっているが、それぞれを簡単に示す。
 第一は、リン酸鉄を用いる方式のリチウムイオン電池であり、これは安くはできるが性能的には不利(エネルギー密度でやや劣る)であるとされて、日本のほとんどの大企業は無視している型であることだ。しかし、量産性に優れ、資源的には全く問題がないという有利性から、大型の電力貯蔵用には最適であると判断した。
 第二に、安全性を最も重視したことだ。リチウムイオン電池は、航空機の事故でも明らかになったように安全性に問題が残っている。電力貯蔵用の大型では、これが絶対であるとして、安全性の確保に最大の努力をした。
第三に、ともかく安く提供できることが必要であるとして、そのためには相当に大きな量産規模が必須であると、なんと300億円の資金を調達して、創業して間もなく大規模工場を建設した。市場が育っていない中で、リスクを取る勇気があったのだ。
 第四に、ベンチャー企業は創業者がリスクを取る代わりに、上場すれば非常に巨額の創業者利得が得られるというかたちにするのだが、それがほとんどない社会事業的なビジネスモデルにしたことだ。それであるからこそ、巨額の資金が確保できたのであろう。その出資者は、吉田さんが示した理想を共有する多岐にわたる企業である。
 第五に、追い上げてくる韓国や中国などへの技術流出を防ぐために、量産設備を完全にブラックボス化するとともに、極度に自動化した量産によって、生産に携わる人員を極小にした。これまでの種々の技術における流出は、人の流出によって生じている面が大きいのである。
第六に、顧客のニーズに基づいた製品創造ではなく、顧客ニーズには頼らず、自ら市場を創っていくという製品創造に狙いを定めていることだ。これからの社会で必要とされるであろう製品を、先取りして創っていくのである。
これは、今の日本の企業が新しい方向を目指すべき戦略として挙げられるもののほとんどを含んでいると言えよう。ベンチャー企業は当然ながら、大企業、中堅企業も変わっていくべき時代であり、新たな戦略が必要であるが、まさしくそのモデルとなるのが、エリーパワーであり、創業者吉田博一である。
それが、技術にはシロウトの経営者によって実現された。ここにこそ、新しい道を進もうとする企業が取り入れるべき要点がある。
 ここであえてシロウトとするのは、クロウトの皆さんに警告を発するためである。私が野村総研にいた非常に古い話であるが、当時はアメリカの最高の知識人とされた著名なハーマンカーンの話を聞く機会が何度もあって、一つのことが今も鮮明に記憶に残っている。それは、「知り過ぎていることによる能力の欠如」であり、巨大なアマゾン川の水力発電所の開発では、先進国の技術者たちは適切なシステムを設計することができない」ということであった。
 日本の幹部級、トップクラスの技術者たちは、非常に豊富な経験と知識を持っている。それが、新しいことへの挑戦では、むしろマイナスになるのではないか。それを深く思わなければならない。吉田さんのように、真っ白のキャンバスに絵を描くように、挑戦したいものである。
なお、吉田さんは、ある面では大変なクロウトである。それは、お金を集めることであり、また大企業のトップと会って話して説得する能力である。大銀行で修行して副頭取まで務めたのであるから、その力は非常に優れているはずだ。
 このような産業界の超ベテランの方々が大勢現れて、強い想いを持って、まったく新しい事業を始めて下されば、スケールの非常に大きい事業となって、日本の産業、経済は大いに元気を出すに違いないのだが。

 (文責:森谷正規)

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