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性格の異なる多様な機器を生産する現場/東芝メディカルシステムズ 訪問

《と   き》2013年6月18日

《訪問先 》東芝メディカルシステムズ(株) (栃木県・大田原市)

《講  師 》常務 統括技師長 内蔵啓幸氏
《コーディネーター》放送大学 名誉教授 森谷正規氏

 2013年度前期第3回は、東芝メディカルシステムズの那須事業所を訪問し、医療機器の生産現場を見せて戴いて、内蔵(くら)啓幸常務統括技師長から「東芝が目指してきたCT開発の経緯、今日の挑戦」と題するお話を戴いた。 東芝は、良く知られているように、レントゲンと言われた時代からX線装置を開発、生産してきて、MRI、X線CTなどの最先端の医療機器を、日本では先頭を切って開発してきた企業である。アベノミクスで安倍首相が強調している成長分野の有力なものが医療機器であり、今後への期待は大きく、まさに時宜を得た訪問であった。
 生産現場は、X線装置、CT、超音波装置を見せて戴いたが、機器自体の詳しい構造や機能についての説明があって、実物を前にしての説明であるから、よく理解が出来た。CTは、極めて大型で複雑な構造をしていて、それがいかに進展してきたのかのが良く分かった。超音波装置は、対照的に小型であり、かなり量産的な製品である。それらの生産現場を見て、医療機器の多様性というものを認識できた。医用検体検査装置も生産していて、それは見ることはできなかったが、おそらくまったく異なる装置であるだろう。
 やや意外であったのは、工場に入るのに、靴のままで良かったことだ。エレクトロニクスが核になる高度な機器であろうから、工場はクリーンルーム的であるかと思っていたのだが、そうではなく、超音波機器のプローブの生産だけは、クリーンルームで行われていた。CTが代表的であるが、電子というより電気機械の面が強いのだという印象であった。
 医療機器は、非常に高価格の製品であるのだが、超音波装置は小型であり、内部は見なかったが簡易に見えるので、それほど高くはないだろうと、およそどれほどの価格であるのか、聞いてみた。
 案内を戴いた方はやや口を濁していたが、最も高度な装置は1000万円ほどであるとのことであった。この装置は大きめの洗濯機ほどの大きさであり、その高さにびっくりした。隣にホンダの方がおられたので、「車とまったく違いますね」と言ったら、「車は安すぎます」と、苦笑していた。
 CTについては、価格は今は公表していないとして言って貰えなかったが、数年前、その時点での最高機種は、五〇数億円とおっしゃった。もっとも、「それで買って貰えたら、儲かるんですけどね」と付け加えられた。

世界の3強に対抗するには

 見学の後の内蔵さんのお話は、まず、世界の医療産業全体の状況から始まった。医療サービスの世界全体では、年間500兆円の市場であり、その中で医療機器は25兆円ほどとなっている。
 問題は、日本は医療機器の世界市場では強力とは言えないことだ。現状では、輸出よりも輸入が多いという状況であり、先端産業では、このような分野は他にはないだろう。その大きな理由の一つは、しばしば言われるのだが、日本企業は治療機器に積極的には参入しないことによると言える。生命に関わるので、敬遠しているからと言われる。
 もっとも、死に至る恐れはない診断装置は、エレクトロニクスと高度な機械技術によるもので日本の強い分野でもあり、欧米とほぼ並んでいる。しかし、そこにも大きな問題があると察することができた。五つの主な診断装置の世界シェアを詳しく話されたが、世界で強いのは、GE、シーメンス、フィリップスであり、日本は全企業を合わせて、それぞれ1社に対抗できる規模である。
 ここに、日本の産業に共通する問題点があると言える。世界の3強は、それぞれの国で、ほぼ1社で独占している。しかし、日本は、数社が激しく競合している。この点については、質疑の時間に、問題提起として述べておいた。
 もっともCTは、国内では東芝が圧倒的に強く、したがって3強と互角に戦っている。
いずれにしても、日本が医療機器の分野において世界市場で大きく伸びていくためには、技術を越える大きな課題があると言わねばならない。
その問題はさておいて、この場では、東芝がCTにおいて、いかにして技術開発を進めて、現在の世界でのトップレベルの地位を確保しているかというのが、内蔵さんのお話の核心である。

 三つの方向への多様な進展であるCTの技術開発

 そのCTの技術の進展について、極めて詳しく具体的に話された。まさしく日進月歩であり、これが医療機器の技術進歩だと、改めて強く認識した。CTに関して言えば、目指すべき目標と課題が実に多いのであり、それによってさまざまな方向への進展が求められる。
大きくは三つ挙げられるが、第一は時間であり、診断時間を短くしなければならない。第二は、診断する部位を広げることである。第三は、分解能を高めることである。そのそれぞれにいかに取り組んできたのかを、詳細に話された。まったく絶え間のない技術開発の連続が、CTである。このような技術開発は、他にはないのではないか。
 興味を引いたのは、その過程において、第三世代から第四世代へ、さらに第五世代へと開発を進めていって、結局は、第四、第五は、開発して一部は製品化したものの、問題点があって本格的な採用には至らなかった。
 一方で第三世代が抱える問題点を解決するのが現実的であって、今はその方向へ進んでいることだ。技術的に非常に細かなことになるので、内容には入らないが、半導体などに見られるようなひたすらの性能向上への一本道の開発ではないのがCTである。それは、人間というきわめて複雑な対象を扱う技術であるからと言えるだろう。

 米国市場でいかにしてシェアを高めたか

 世界市場への展開については、米国市場においての低かったシェアをいかに高めたかというお話が示唆的であった。シェアが低かった理由は二つあって、一つは、操作をする技師にとって、東芝製は操作が繁雑に過ぎて評判が悪かったことだ。日本では、患者一人一人に対応して、細かに変えることができる利点を打ち出していたのだが、米国では、決まったパターンでの操作が求められる。日本人のきめ細かさに対応する機器が、海外では通用しないということであり、他の分野にもある重要な課題だ。そこで、操作パネルをすっきりさせるなど、操作の面での改良を行った。
 二つ目は、新製品の高度な性能を、撮影時間の短さや分解能などの数字で現していたが、それが現実にいかなる利点であるかについての説明になってなくて、何がいいのか理解して貰えなかったことである。性能を数字で示して、素晴らしいでしょうというのは、日本の製品に多く見られる問題点である。そこで、米国で医師と組んで、その高い性能が診断の上で具体的にいかなるメリットをもたらすかを明らかにして、それを基に売り込むようにしたということである。医療機器においては、特に重要なことである。
 考えて見れば、この二つともに、さまざまに異なる現地の状況に合わせていかに売り込むかという、これからの日本企業の共通の課題である。最先端の高度な技術製品である医療機器においても、この問題があったのであり、心すべきことであると痛感させられた。
 医療機器は、高度であり、複雑であり、多様性があるという面で、日本企業が大いに力を発揮できる分野である。その部品や素材において、多くの企業が力を注いで、世界市場において大きく伸びて欲しいものである。
 なお、余談として付け加えると、福島原発事故でにわかに広く知られるようになった放射線被曝の問題があって、CTは、一回の診断で6ミリシーベルトほどの被曝があり、かなり大きいとされた。この数値が一般的に言われていて、ご存じの方が多いだろう。ところが、東芝のCTでは、今は被曝は0、1から0、2ミリシーベルトほどに過ぎないという。CTの検査を受けるのに、放射線被曝は、まったく心配することはありません。

 森谷正規



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