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テルモ独自の医療機器の開発、今後のビジョン/テルモ 高木俊明氏

《と   き》2012年11月5日 
《講  師 》テルモ(株) 取締役上席執行役員 高木俊明氏
《コーディネーター》放送大学 名誉教授 森谷正規氏

 

 「イノベーションフォーラム21」の2012年度後期第1回は、テルモ株式会社の高木俊明取締役上席執行役員の「テルモ独自の医療機器の開発、今後のビジョン」というお話であった。
 テルモは名前は良く知られているが、事業内容は詳しくは知らない人が多いだろう。医療の分野で大活躍している企業であるが、体温計の他は一般には馴染みが薄い。1921年(大正10年)の設立で歴史の長い会社であるが、よく知られているのは体温計である。テルモの名称も、サーモメーターのドイツ語読みから来ている。しかし今では、体温計は売上高では0・5%ほどに過ぎず、事業の主たる領域は、カテーテルに代表される心臓血管、血液製剤・血液治療・細胞培養の血液システム、輸液・栄養食品・糖尿病治療などのホスピタルの三つの分野が中心である。
 売上高は4、000億円に近いが、利益が600億円と利益率が非常に高く、やはり一般の製造業とは大きく異なる点である。売上高のほぼ半分が海外であり、グローバル化が最も進んだ企業である。
 医療機器は、厳しい立場に追い込まれている産業が多い日本にとって、これから大きな望みを託すことができる有望な分野であり、また、生命に関するものであるから一般の製造業とは異なる面が多く、その意味で大いに注目すべき企業である。
高木さんのお話は、創立からの事業展開、世界の医療産業と日本の位置から始まって、個々の事業内容、会社の理念と組織や具体的なマネジメント、海外展開、研究開発体制など非常に幅が広く、他分野にない特徴があり、しかも馴染みが薄い医療機器メーカーというものが良く分かる申し分のない内容であった。
一般の企業よりも特に色濃く出ていたように受け止めたのは、社会への責任を非常に重視していることである。基本はやはりモノづくりであるが、品質において完璧を期すことである。それは、命に直接関わる製品を作ることから来ている。その基盤になるのは、人である。
 そこで、新鮮な言葉であったのが、社員を「アソシエイト」と呼ぶことである。主従の関係ではなく、社員の一人ひとりが主役であることを社内に浸透させるための言葉である。品質の向上に、社員全体が主体的に取り組む姿勢を持たせるのである。
モノづくりに関しては、カテーテルとスタントについての詳しいお話があった。今では、その用語はしばしば耳にするが、非常に高い精度が要求され、また機能的にも進化を続けていることが良く分かった。これは、日本が大いに力を発揮出来る製品である。
もっとも、医療機器の全体においては、日本は高い技術的なポテンシャルを持っていながら、米国、欧州のメーカーに遅れている分野が多い。特に、ペースメーカーや手術用ロボットがそうである。質疑の時間に、その点について質問したが、日米欧の医療機器開発における国情の違いの一端を知ることが出来た。米国が大きくリードしているが、その大きな要因の一つが、高い技術を持ったベンチャー企業が多いことである。医療機器は、成功、失敗のリスクが大きく、しかも売上高は大きくはない。そこで、挑戦する主役はベンチャー企業ということになる。
 もう一つの要因は、安全に関する社会全体の受け止め方である。残念ながら深い議論は出来なかったが、安全を絶対視するがために、リスクを冒してでも挑戦する勇気が日本社会では生じないのが重大問題であり、日本の遅れの根因はここにある。政府なども医療機器産業を有望視してはいるが、この問題に踏み込まないと、明るい展望は開けない。
 マネジメントにおいては、理念を掲げているが、それを実現するための行動をいかに起こさせるかにおいて、具体的な実行手段をいろいろと考えているというのが強い印象であった。その一つが「5S」である。整頓などのSは古くから言われていて、新鮮味はないのだが、面白いのは「誤S」である。五つのSのそれぞれに並べているのだが、整頓に対しては整列であり、清掃に対しては掃除である。整列や掃除では駄目だというのだが、それはどういう違いか、お考え下さい。
 これは、掲げる理念や目標が言葉だけの浮いたものになりがちであるのを防ぐ有効な手段である。
 テルモは、これから有望な分野の素晴らしい企業である。 森谷正規

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