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幹細胞による再生医療の最先端/東京女子医科大学 岡野光夫教授

 2012年度(前期)「イノベーションフォーラム21」の第6回は、東京女子医科大学の岡野光夫教授による『幹細胞による再生医療の最先端』というお話でした。
 これは、細胞シートを用いてさまざまな疾病の治療を行うという技術であり、再生医療は世界各国で進められていますが、シート状にして大きな面積にして治療の幅を大きく広げている技術を世界で初めて開発したのが岡野教授です。
 その画期的な技術がいかにして可能になったのか、岡野先生は最初に、混合と融合の相違を話されました。これが、この技術、この講演の核心であると、私は受け止めました。
 混合は、技術においては、異分野の技術を組み合わせるものであり、すでに広く進められています。それは、異分野の研究者、技術者の共同作業によって行われます。すでに非常に多くの成果が得られています。
 岡野先生は、融合は、その混合とは異なるものであると明言されました。融合とは何か、これは異分野の技術がまさしく溶け合うものであり、混ぜ合わさるのとは大きく違うとおっしゃいます。では、どのようにすれば溶け合うのか。それは、みなが力を合わせる単なる共同作業ではなく、一人の研究者、技術者が異なる分野の技術を完全にものにして、それを基に開発を行うことによって可能になります。先生は、「ダブルメジャー」という言葉を使われました。つまり、一人の人間が二つの専門を持つことです。
 その典型が岡野先生です。先生は、大学のご専門は化学でした。しかし、大学院の頃から、医療に結び付く材料の研究開発に取り組んで、やがて、東京女子医科大学に入られました。つまり、医療の世界にご自身で飛び込んで、医学にどっぷりと浸かることになったのです。化学と医学のダブルメジャーです。それこそが、細胞シートの開発に活かされました。
 日本は、内視鏡、CT、MRIなどの医療機器においては、世界で大きな力を持っています。これは、混合つまり共同作業で進められて、成果が上がりました。しかし今、患者を外から扱うのではなく、患者の、つまり人間の内部にまで入り込むことが、医療では求められています。言うまでもなく、遺伝子や細胞そのものを扱うのです。
 ところが、そこに医学ではなく、工学的な発想が必要になってくる場合があります。細胞シートがその典型です。再生医療の基になるのは、細胞です。医薬品や医療機器など、人間が作り出すものではなく、人間そのものを治療に利用しようというのが、再生医療です。
 しかし、細胞そのものはごく小さなものです。それでは限界があるので、大きくしたい。そこで必要になったのが、工学的発想です。工学は、モノをいくらでも大きくします。具体的には、小さく薄く作った細胞を奇麗に剥がして重ねるための化学材料を見つけだしました。それを、何層も重ねると大きなシートになるのです。
 医学的なニーズがある、それを工学的に解決出来ないかと模索して生まれたのが、細胞シートです。このシートの積層は、いま30にもなっていて、これは将来、臓器を作る可能性をもたらします。
 現状では細胞シートは、角膜、歯茎などから、心筋症、食道ガン、さらに肝臓、膵臓などの治療にまで進んでいます。要するに、細胞シートを患部にペタッと張るのです。重い心筋症のために、外置の人工心臓が離せず、外出が難しかった患者が、歩いて学会発表に顔を出せるまでに回復したという映像を見せていただきました。
 先生が所長をなさっている先端生命医科学研究所(TWIns)は、東京女子医科大学と早稲田大学が共同で設立した研究所です。数年前に、新経営研究会のこのフォーラムで、早稲田大学のロボットの研究開発で著名な高西淳夫教授にご講演をお願いして、早稲田にお伺いしましたが、高西先生はTWInsにも研究室をお持ちで、この立派な研究所を見せていただきました。これこそが、まさに融合の拠点です。
 このTWInsで、若い研究者たちが、張り切って斬新な研究テーマに挑戦しているのを見て、私は「ここには新しい風が吹いている」と感じて、それを早速、コーヒーブレイクに入る前に皆さんに申し上げました。日本全体に、新しい風を吹かせたいものです。

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