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京セラの生産技術力向上と、現場が進化・成長しつづける体制づくり/京セラ国分工場

《と   き》2012年3月16日

《訪問先 》京セラ(株)国分工場(鹿児島県・霧島市)
 
《講  師 》執行役員 研究開発本部 生産技術開発統括部長 山下洋一氏
《コーディネーター》テクノ・ビジョン代表、元帝人(株)取締役 研究部門長 相馬和彦氏

 

 去る平成24年3月16日、霧島市にある京セラ国分工場を訪問した。京セラはベンチャー企業として出発したが、独特なアメーバ経営によって次々に新しい技術や製品を開発し、ファインセラミックを核とするグローバル企業へ発展したことで知られている。今回は、最先端のファインセラミック工場を見学すると共に、グローバル企業に発展した京セラが、創業以来発展を支えたアメーバ経営を、現在の大組織の中でどう活かしているのかをお聞き出来ると期待して訪問した。

 最初にDVDによる会社紹介があり、次いで執行役員 研究開発本部 生産技術開発統括部長兼精機事業部長 山下洋一氏による「京セラの生産技術力向上と現場が進化・成長し続ける体制づくり」と題した講演を伺った。

 山下氏は1988年に途中入社し、組織横断的な業務改革、技術開発を担当してきた。質疑応答の時にも出たが、言わば京セラの原点であるアメーバ経営の足りないところを補うコーポレート的な役割をずっと担当し、生産技術部門グループにおける生産技術課題の根本的解決を実行してきた。その際には、①事業部門との一体開発、②技術者の継続的育成の二つを常に念頭に置いてきた。

 京セラの創業時の目的は、創業者稲盛氏の開発した技術を世に問うことであった。しかし、創業後に従業員による連判状事件が発生しため、会社の目的を、「従業員の物心両面の幸福を追求すること」および「人類社会の進歩・発展に貢献すること」に改めた。

 世の中の変化や企業の発展に伴い、さまざまな決断を迫られることになるが、その時の基本となる経営哲学として、「人間として何が正しいか」を判断基準に定めた。

アメーバ経営の目的は、

  1. マーケットに直結した部門別採算制度の確立
    採算がなくなったら、その組織は消滅する。そのため、人事異動は毎月2回ある。
  2. 経営者意識を持つ人材の育成
  3. 全員参加経営の実現

にある。

 部門別採算制度として使用する指標は付加価値である。

収入-支出=付加価値

付加価値/時間=時間当たりの付加価値

後者の時間当たりの付加価値を基準として採算を見ている。

 アメーバ経営を機能させるためには、3つの要諦がある。

  1. 組織 これを出来るだけ小さくし、常に見直す。
  2. アメーバ間の値決め 時間当たり付加価値を同じレベルにする値決めとする。
  3. バックボーンとなる経営哲学 個と全体のバランスを可能とするもの。
    リーダーには倫理観が必要となり、これが他では真似し難い点となっている。

 個々のアメーバとしては、売上最大、経費最小とするようにベクトルが働くので、日々採算表を作って努力することになる。事業部長が作る理想と現実にはギャップがあるので、このギャップを埋めるために日々努力している。

 採算分析は毎年2回、すべての傘下企業をチェックしているが、特に小規模の会社を注視している。世の中が変化する時には、小規模な会社の決算から出やすいため。

 小集団による経営改善の提案運動をKK活動と称し、全員参加を目的に実施している。2011年度は2,337件の発表があり、金、銀、銅賞の表彰を行った。

生産技術部門は組織横断的な役割を果たしてきた。具体的には、下記の通り。

  1. 労働生産性の飛躍的向上
  2. 独自技術開発による差別化
    生産設備の内製化
    独自プロセスによる付加価値追求
    キラー技術による脅威への対応

 生産技術を向上させ、現場が進化・成長し続ける体制として、3ヶ年のローリングプランを作成し、毎年見直している。研究開発テーマとしては、部門の独自テーマとしてプロセス開発および設備開発を推進し、同時に事業本部からの委託テーマも実施している。中国での生産設備は、最新鋭の自動化設備を投入し、人件費の高騰を予想した手を打って来た。量産化技術開発の為に、共通スペースを利用(有料で)して開発している。

 実際に開発した事例として、プロセス開発、独自のレオロジー制御技術開発、IE分析による量産ライン検討、最適レイアウトと人員配置のラインシミレーション技術開発の説明があったが、詳細は省略する。

 講演終了後、講演に対する質疑応答の時間を持った。要旨のみ以下に纏めた。

  1. アメーバ経営で個々の事業部が最適化する仕組みは良く理解出来たが、会社全体としての最適化と個々の最適化は、技術ではどのようにバランスさせているのか?
    →会社全体を見ての提案は、研究から出てくるので、それを生産技術が一緒に実施する。実例としては、インクジェット、リチウム電池などがある。
  2. アメーバ間の値決めはどのようにやっているか?
    →売値から逆算して決めている。アメーバには、条件を満たせば、製品で括るもの、技術で括るものがあり、様々な形がある。アメーバ内の仕事がなくなれば、人を出すこともあるし、事業部の外に出て仕事を取ってくることもある。
  3. 最先端の研究はどうしているか?
    long-termの要素技術を研究しているグループが大坂にあり、そこで実施している。
  4. 研究開発の評価法は?
    →独自の評価指標で行っている。利益貢献金額/使用費用がその一つだが、現時点では1.5位なので、もっと向上させたい。
  5. 開発事例として示した人員配置ラインシミレーションの技術はどこで開発したのか?
    →ソフトは購入した。IEが現場に入って詳細データを取り、インプットしている。
     

 次いでグループに分かれ、見学に移った。

  1. ファインセラミック館
     通信情報、環境保全、生活文化など主要事業分野毎に、京セラの主要技術と製品変遷が網羅されている。特に創業以来の製品変遷は興味深い。
     2階には稲盛コレクションがあり、特に京セラの基本方針が自筆で記された昭和42年1月15日の資料に注目した。その資料には、「仕事の結果=意志x能力x考え方」と書かれた1行があり、考え方を重視した京セラ経営の起源が理解出来た。
  2. 機構部品事業部工場
     この工場では、エンジニアリングセラミックを使用し、大型の機構部品を製造している。セラミックとしては、アルミナ、ジルコニア、SiC、AlN、コージェライト等を使用し、使用温度が低く、応力の低い用途には、主にアルミナを、使用温度が高く、応力も高い用途にはSi3N4を用いている。
     機構の製造では、原料→成型→切削→焼成→研削の工程があり、原料が酸化物の場合にはガス炉を、窒化物の場合には真空炉を使用している。

     ここで製造している製品は、半導体製造装置部品、液晶製造装置部品、三次元測定用角軸部品、高温集塵用ガスフィルター、釣具(ガイド)などがあるが、電子部品のようなファインセラミックよりももっと大型の部品である。

  • ラバープレス工程 原料セラミック粉とバインダーをラバー型に入れて水中に沈め、プレスする。最低1トン/㎠必要。
  • 切削工程 プレスしたブロックからスライスして切り出す。約20%の収縮を見込んで切る。
  • 焼成工程 サヤに積んでガス炉で焼成する。1500℃で2週間。
  • 研削工程 
    ロータリーグラインダー ダイアモンド刃を使用
    平面研削盤 厚みあるものの側面を研削
    大型研削盤 3×2メートルの平面を研削 ダイアモンド刃
  • 出来上がり加工品陳列 ガスフィルター、庖丁、各種機械部品、釣具(ガイド)等。

 

 今回の訪問で、京セラは創業後にアメーバ経営の長所を活かしながら、同時にその欠点も認識していたことが伺えた。個々の事業部の最適化と、全社としての最適化をバランスさせることはどこの企業でも腐心することであり、アメーバ経営を創業以来の経営形態として来た京セラでは、かなり初期に補完の必要性を強く感じたのではないかと推測される。そしてその対策を取ったことで、今日の様なグローバル経営まで成長させることが可能となったことが納得出来た。

 また、このような独特の企業文化をグローバル化の中で展開してきたことは、其の中に世界で通用する思想を含んでいたことが大きな要因であったと思われる。その要因の一つは、リストラが当たり前の国際競争の中においても、創業時に策定した会社の目的が、「従業員の物心両面の幸福を追求すること」および「人類社会の進歩・発展に貢献すること」であり、基本となる経営哲学が、「人間として何が正しいか」を判断基準として維持した高い倫理性にあると判断される。 

  (文責 相馬和彦)

 

 

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