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日本PISCOを支える‘ものづくり’への思い、時代環境変化への挑戦

と   き:2011年8月24日

訪問先 :(株)日本ピスコ 伊那第一、第二工場 (長野県・上伊那郡)
 
講  師 :代表取締役社長 山崎清康氏 ・ 専務取締役 清水義文氏
コーディネーター:テクノ・ビジョン代表、元帝人(株)取締役 研究部門長 相馬和彦氏


 2011年度前期の第5回は、平成23年8月24日に、長野県上伊那郡南箕輪村の(株)日本ピスコ伊那第二工場を訪問した。今回の訪問は、新経営研究会のメンバーである(株)ミスズ工業取締役相談役 山崎壯一氏のご紹介で実現したものである。日本ピスコは配管用継ぎ手やレギュレーター等の空気圧機器で独自技術を有し、しかも現経営者が一代で築き上げた企業であるので、創業から発展に至る技術開発や事業開発の経緯をつぶさに見聞出来る得難い機会と期待を持って訪問した。企業の永続的発展に必要不可欠な新事業の構築には、日本ピスコの経験とノウハウは貴重な示唆を与えるであろう。  最初に今回の訪問を実現された山崎壯一氏から、創業者である代表取締役社長 山崎清康氏の紹介があった。山崎社長は県境の寒村の出身で、長距離通学などの苦労を重ねて勉学に励み、セイコー関係の時計工場で働いた後、日本ピスコを創業した。業界活動などはせず、社業に専念して今日の事業を築き上げた。山崎社長および技術を支える清水専務のお二人ともに、セイコー関係の企業を経験している。

 次いでDVDによる会社紹介がなされた。本社工場は岡谷市にあり、伊那には第一、第二工場を有している。製品は継ぎ手、制御、切り替え、真空、アクチュエーター、チューブ、プラレールチェーンの7シリーズおよびロボットパーツがあり、分厚いカタログには2万種類に及ぶ製品がリストアップされている。長年顧客の要望に応えて新製品を作り出しているうちに、それらが一般的にも売れるようになった結果の集積ということである。随って、顧客毎の特注品はこのリストに記載されていない。

 ユーザー指向は企業創業時からの伝統であり、S-Net経由で顧客は部品1個から注文出来るようになっている。海外では、シンガポール、台湾、韓国、米国に拠点を有している。
 DVDの追加として、会社概要の説明があった。創業は1976年(昭和51年)10月18日、資本金は4億8,856万5000円、従業員は350名。創業は岡谷市だったが、伊那で第一、第二工場を建築した。販社としてピスコ販売を有し、従業員は90名。製品の応用分野は極めて多岐に渡り、近年の売上高は100億を超え、今期の見込みは105億。空気圧機器業界の総売上は、1992年1,832億円、2010年3,102億円と1.69倍に増加したが、その間日本ピスコの売上は、32億円から104億円と3.25倍に増えた。環境対策にも力を入れており、総出力400kW、年間発電量45万kWの太陽光発電を工場内で行っている。
 グループに分かれてバスに分乗し、第一、第二工場の見学に移動した。

1.第一工場

  1. 射出成形工場 14台の射出成形機が稼働しており、60%の部品は内製化。PBTのように、同一材料を多数の成形機で使用する場合は、成形機への一括供給システムが出来ている。 
  2. 押し出し成形品の二次加工 ナイロン-11, -12やウレタン製のチューブをコイルに成型する工程。チューブを加熱しながら成型するが、チューブの内部を流れる空気量が場所によって変化しないように成型するのに苦労した。 
  3. ロックツメ成型工程 継ぎ手の性能を決めるプロセスで、無人化されている。耐久性の向上に苦労した。
  4. 耐久試験室 空気圧のオン/オフ3,000万回クリアが条件 
  5. 真鍮加工工場 内製は30%で、三交代。切り子はエアで搬送し、人手を掛けない。
  6. 切り子処理装置 切り子の油を除去する。通常汚れ勝ちな⑤、⑥工場が綺麗に維持されているのが印象的。 
  7. ステンレスの切削 現在は2台で試験中。将来の医療用途を目指している。
  8. スピードコントローラー切削工程 NC機械使用。 
  9. レジン倉庫
  10. NC室 試作や特注品製作。
  11. 樹脂の押
  12. し出し成型工程 70~80万メートル/月のチューブを生産している。台湾にも同能力の工場を有している。チューブと継ぎ手は相性があって、別の会社の製品を組み合わせても合わないことが多い。自社で全部作るか、他社製品にどれかを合わせるかの選択になる。
  13. 恒温室 加熱下での耐久試験を行っている。

2.第二工場

  1. 太陽光発電モニター 工場内に設置した400kW太陽電池の稼働状況がオンタイムで分かる。
  2. 製品展示場 展示会に出品した部品およびモジュールが稼働状態で展示されているため、製品の使用方法が分かり易い。
  3. 防塵室 クリーンルームではないが、防塵を必要とする真空発生器、ソレノイド、継ぎ手などの高付加価値製品を組み立てている。 
  4. 量産試作室
  5. トレーニングルーム 展示会で使用済みの機材を活用した社員及び顧客のトレーニング。
  6. 組み立て工程 受け入れ、購買、自動倉庫、平置き場などの先に、継ぎ手の組立工程があった。継ぎ手に使用するゴム部品は数が多いので、色分け管理している。オペレーターの場合、多くて毎月10~11万個組み立てるが、製品毎の製造数にバラツキがあるため、小ロット、中ロット、大ロットに分け、手動と自動を使い分けている。手動工程では自分で、自動工程では抜き取り検査で不良品を検出しているが、不良品率はppmオーダー。最後に包装工程、出荷工程(ピスコ販売担当)を見学した。 
  7. クリーンルーム 10,000以上のクリーン作業環境での作業用。

 見学終了後、講演に移ったが、今回は、代表取締役社長の山崎清康氏と専務取締役の清水義文氏のお二人が経営と技術を分担されて話された。講演内容から、このお二人が実務において、経営と技術を車の両輪のように見事に分担され、それによって今日までの発展が支えられて来たことが明確に示され、人間関係は”good chemistry”の好例と言える。
 最初に、「日本ピスコを支える“ものづくり”への思い、時代環境変化への挑戦」と題した講演を、代表取締役社長の山崎清康氏よりお聴きした。
 山崎氏は創業前にはセイコーの二次下請けメーカーで働いていたが、自分で開発、製造、販売したいとの思いがつのり、昭和51年に日本ピスコを創業した。流体の切り換え弁としてPSC(Pipe Slide Change)を発想し、特許を申請した。これが会社の名前PISCOの由来となっている。ワンタッチ継ぎ手を真鍮加工によるロック機構で開発し、これとプレスによる機構も開発したので、昭和53年にOEMで受注を開始した。その後スピードコントローラーとワンタッチ継ぎ手を組み合わせて上市したことが、原点となった。その当時は、昼間は生産に没頭し、夕方5時からは新製品開発を行うという生活だった。 

 創業当時から、自分で考え(開発)、自分で造り(製造)、自分で売る(販売)メーカーを目指したので、開発では独自性の追求を、製造では継ぎ手専業に特化することを、販売では販売ネットワークの構築を目標とした。販売ネットワークでは、国内に15拠点、海外に4拠点を持っている。また、足りない分を国内2社、海外1社(世界でNo.2、59ヶ国を網羅)とOEM先としての販売提携も行っている。
 昭和60年(1985年)は日本ピスコの国際化元年であった。1992年にドイツの空気圧機器メーカーと業務提携し、ピスコとのダブルブランド戦略を開始した。
 プラスチック用金型は1380個使用しているが、汎用金型は協力会社、専用金型は自社と使い分けている。カタログには2万種類がリストアップされているが、これは長い間の企業努力の積み重ねだ。 競争力を維持するためには、汎用品・低価格品のvolume zoneの確保が必要である。
 ブランドやサービスに込めた思いのように、見えないものが重要だ。会社の見える部分は見えない部分に支えられており、社員の個性を尊重し、その結果として顧客の立場に立ったものづくりとチーム力が経営理念の中心にある。初期の3期以外赤字計上はなく、過去社員解雇もしていない。

 激動する現代ではあるが、変えるべきものと変えてはいけないものがある。変えるべきものは、リスクマネジメント(2社購買・2拠点生産・2ヶ国生産、コアパーツ内製化)、商品戦略転換(低価格商品への挑戦、顧客個別商品・システム商品、安心・安全商品)、バランス経営(国内・海外での販売・生産、ピスコ商品とOEM商品)である。変えてはいけないものは、経営の基本と経営思想である。経営の基本は継ぎ手専業への特化であり、経営思想はグループの拠り所を「人づくり」、「ものづくり」、「社会貢献」におき、「挑戦し続ける」ことだと信じている。

 次に「顧客第一主義の企業活動・ニーズに対する提案と対応事例」と題した講演を、日本ピスコの技術開発リーダーである専務取締役 清水義文氏より伺った。
 構造改革期に創業したので、社内の技術開発はニーズに対する提案を強調した。身の丈に合わない営業はしない、クレーム・注文にはスピーディに対応するなどを方針とし、個々のニーズに対応した製品を標準化することにより、製品群を充実してきた。
 開発にはニーズ開発と独自開発がある。ニーズ開発は仕様と納期が明確で、実装試験は顧客が実施する。独自開発は、仕様に独自のプラスを行うので、納期も延びる。また、仕様が明確になっていないので、過剰品質になり易い。
 
特注品は、顧客は汎用品として捉えるため、パテントを共有し、商品が別のルートに流れる可能性に配慮する。特注品も量産すればコストダウンが可能になる。 商品の開発例として、いくかの商品について説明があったが、詳細は省略する。

  • バスの室内ライト用継ぎ手 LEDでビニールパイプを光らせる。 
  • 生ビールの注ぎ口デバイス ・タイヤスパイクを出すデバイス トラック
  • バス用 -30-80℃で使用
  • 歯科治療用椅子の麻酔ガス、空気、水供給用継ぎ手 ・養魚所の餌巻き 広くかつ均一に散布する。
  • 電車のブレーキ、扉の開閉、新幹線のトイレ ・空気織機の糸のエジェクター

 お二人の講演終了後、質疑応答を予定していたが、講演と見学に時間を費やしたため、残念ながら質疑応答の時間がほとんど取れなかった。ただ、質疑の必要が殆ど無いほど、中身の濃い講演であったので、代表質問を一つだけ割り込ませ、残りはパーティーで個別に実施して貰うことにした。  日本企業は国際的な価格競争の激しい分野、特に大量生産される汎用品分野での競争力を失いつつある。高性能品・高価格品にシフトする手もあるが、メーカーとしての価格競争力は、バルク商品、汎用品での競争に負けると、結局コスト高で高性能品でも競争力を失うことになる。これについては、どのように対応しているか?  
 → 現在20,000種の商品を販売しているが、70%は赤字、30%は黒字の状態。会社としては、大量生産品で食べており、特殊品はショーウインドー効果に留まる。台湾は人件費、電気料共に日本の40%であり、大量生産品はここで造る。ここから更に22%のコストダウンを実施している。また、危機管理の立場からも2ヶ国生産を行い、顧客への物流リスクをどう下げるかも検討中である。  最近の円高対応には個別企業が必死で対応しており、特に自動車業界はその典型例なので、出席者からもこの課題についてコメントをお願いした。
 大手自動車部品メーカー出席者からのコメント
 → カスタマーへの供給が第一であるので、国内では自動化などあらゆる手段を駆使し

てコストダウンを行い、海外では顧客の進出した現地生産で対応する。
 大手自動車メーカー出席者からのコメント
 → 車体毎に仕様が異なる他品種・少量生産は1ラインで造るシステムを社内で構築した。こういう方法を応用すれば、日本ピスコのような他品種・少量生産の業態でも更なるコストダウンは可能になる。
 代表質問に対する講演者からの回答および出席者からのコメントからも、大量生産品、バルク商品での競争力回復が、メーカー競争力の原点であり、高付加価値品やいわゆる差別化商品に頼ることは、メーカーとしてはやるべきことではないことが再確認出来た。

 今回は新しい製品を核として会社を創業した当事者による講演であり、創業時の経営理念・経営方針および技術開発の重要さが如実に示された印象深い内容であった。また、経営者が、経営と技術の得意分野を分担し、車の両輪のように会社を発展させてきたチームワークも見事であった。企業競争力の最大の拠り所は、組織を支えるヒトをどう活かすかであることを実感し、充実した一日となった。 (文責 相馬和彦)

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