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電鋳こそ自分たちに与えられた使命と心に決めて… 江南特殊産業

 

と  き:2011年2月10日


訪 問 先 :江南特殊産業(株) 本社・江南工場 (愛知県江南市)
 

講   師 :代表取締役社長 野田泰義 氏

コーディネーター:テクノ・ビジョン代表、元帝人(株)取締役 研究部門長  相馬和彦氏

 

 2010年度後期第4回は、平成23年2月10日に、愛知県江南市に本社・工場を有する江南特殊産業株式会社を訪問した。江南特殊産業は、超精密ポーラス電気鋳造技術を独自開発し、国内・海外自動車メーカー用インパネ、ドアなどの内装材成形を行っている独創的な企業である。しかも現経営トップが45年前にゼロから出発し、一代で世界に通用するレベルを築き上げた。このポーラス電鋳技術は、高精度の品質を有するばかりでなく、コスト削減および大幅な省エネルギーも可能な画期的技術であり、2005年度「ものづくり日本大賞」第一回特別賞を受賞している。

 先進国および新興国を巻き込んだグローバル競争で勝ち残るためには、各企業は徹底的に世界市場シェアを獲得するか、他社にはない優位技術を確立して顧客に価値を提供するかの選択を迫られている。市場シェアを追求しても、自社技術に優位性がなければ、簡単にシェアを失う例は散見され、いずれの場合でも優位技術の開発は必要条件である。中規模以下の国内企業で、他社にはない優れた技術を開発することによって世界トップシェアを獲得し、今回の不況でも業績を伸ばしている例は多く、江南特殊産業のポーラス電鋳技術はそれに該当すると思われる。

これから益々激しくなるグローバル競争に勝ち残るために、技術および経営の独創性は、企業の規模に拘わらず、現代の日本企業にとって最も必要かつ喫緊な要件となっているのではないだろうか。今回の江南特殊産業では、自社組織内でそれを実現するため、多くの示唆が得られることを期待して訪問した。

最初に江南特殊産業の電鋳技術について、二つの講演があった。最初は、「ポーラス電鋳IMG(In-Mold Graining)とスラッシュ工法について」と題して、宇野秀広営業部海外担当部長より説明があった。通常使われている電鋳(ノーマル電鋳)では、成形品の金型表面の上に樹脂粒子を付着(スラッシュ)させ、これを加熱融着させて成形するが、ポーラス電鋳の場合には、ポーラスな金型の上に凹引きで基材を圧着させて成形する。成形法としても、IMG-L成形、IMG-S成形、L-ラミネーション成形、S-スキン成形など適切な方法が採用出来る。そのため、製品品質向上のみならず、処理時間の短縮、金型寿命の長期化によるコスト削減が可能となり、加熱エネルギーの低減による大幅な省エネが実現出来る。

具体的には、製品一個の処理時間は、IMGで80秒、スラッシュで540秒、寿命はIMGで40万ショットまでOKと長期化、そのため製造コスト上有利となった。品質では、転写性は同等であるが、IMGではステッチ強度が大きいのに対し、スラッシュでは強度は小さく補強が必要となる。製品として重要な要素であるデザイン性では、IMGでは薄肉化が可能となり、デザインの多様性も確保出来る。自動車内装の多くにIMG技術が採用されると、全体で5kgの軽量化が可能となる。加熱エネルギーは、スラッシュ法の1/14に減少する。ステッチのリアル化は、付加価値として認められている。

海外での営業は、直取引を原則としており、顧客の要望を直接に聴ける体制が重要と認識している。

次に大山寛治専務取締役より、「MPM(Metal Piping Method)」についての説明がなされた。射出成形型のキャビティー型として開発されたもので、従来工法に対比し、ウェルドラインレス、シルバーレスによる品質向上、納期の20%短縮、成形サイクルとコストの10%低減などのメリットがある。これにより、スラッシュ成形からインジェクション成形へと成型方法が変わる可能性がある。この工法に必要な基本技術は、金型の加熱パイプ固定法と強化コンクリートの二つの特許でカバーされており、この二つを組み合わせて使用する。

次いで班に分かれて工場見学に移った。主な見学内容を以下に纏めた。

  • テクニカルセンター
    • 設計室 3Dモデリンググループ、金型構造設計グループなどがあり、机は同じ方向に並んでいる。ソフトよりも経験が大切。
    • 営業部隊
    • 型(モデル) 昔は木を使用、今は樹脂製。工作にはNCを使用するが、仕上げは手で行っている。
    • モデルの加工、5軸のNC使用。精度の高い工作は温調室で。
  • 本社・工場
    • 4階 シボ張り作業室。モデルの表面に、手作業で0.5ミリの塩ビシートを張っている。塩ビシートは、模様(シボ)の付いた状態で、メーカーより送付される。座った作業なので、腰を痛めないように床に工夫が施されている由。
    • モデルのメス型製造。シリコン樹脂製で、厚み約10mmの樹脂が流し込めるように設計されている。繊維補強された型を2個作成し、1個は倉庫に保管、もう1個を電鋳用に使用。金型は何回でも作成出来る。曲げた部分は、繋げて手作業で修正する。
    • モデルの倉庫。過去に作成したモデルが残されている。会社の宝の山。
    • レーザー加工、金型部品加工。樹脂型はポーラス樹脂製で、試作に使用する。金型では納期が20~24週かかるが、樹脂型では8~10週で納入可能。
    • 三次元カメラ。精度の評価に使用していて、面での精度アップにプラス効果あり。イスラエルのOptigo社製で、1台6000万円。
    • MPM工場。コア型、金型枠の機械加工。
    • 組み立て工程。

 見学終了後、「見えない世界に助けられている経営」と題した講演を、代表取締役社長の野田泰義氏より伺った。同社の技術 詳細は既に幹部お二人からお訊きしており、野田社長のお話しから、江南特殊産業の経営理念、経営哲学が明確に伺えた。

  • 創業と会社概要

江南特殊産業の創業は1965年1月で、現在の資本金は9390万円、従業員は152名。社訓は、「善意、進歩、真剣、自然」、経営理念は「生かされている事を常に感謝し、仕事を通じて精いっぱい社会に貢献します」と定めている。

拠点は、国内が本社・江南工場、テクニカルセンター、犬山工場、海外は米国、タイ、韓国、中国に関連会社、カナダ、モンゴルに合弁会社を有している。

電鋳との付き合いは、そもそも高校生の時に、電気鋳造という技術を知ったこと。この頃に2週間ほど正眼寺に通ったが、その時の教えは今でも経営判断の元になっている。卒業後にMTP化成(現イノアック)という会社に就職したが、そこで電鋳に再会した。原料であるウレタンに喉をやられ、退職して伯父の仏壇屋に就職したが、飾り金物の職人不足から電鋳で金物を作ることになり、1965年に独立した。その後徐々に仏壇の飾り金物からシボハリの仕事が多くなり、顧客も自動車関係が多くなっていった。

  独立後は、自宅兼作業場で電鋳の研究開発を行い、1973年のオイルショックで注文が激減した際にも、椅子洗い、穴の補修、椅子の縫製などで糊口を凌ぎつつ、一人だけは電鋳技術の開発を継続させたが、これが後になって花が開く突破口となった。

  • 技術の発展

1983年になって、ポーラス電鋳凹引き型がホンダアコードの生産車に採用された。それに止まることなく、スーパーポーラス電鋳、メッシュ電鋳、パンチング電鋳と新しい技術開発を継続している。スーパーポーラス電鋳はポーラス電鋳の発展型で、ポーラス電鋳の穴の先がストレートになった構造になっており、鏡面磨きやエッチング加工が可能である。またブロー成形や射出成形が可能な強度を有する。

メッシュ電鋳は、成形機と組み合わせることにより、古紙パッケージの生産が可能となる。開口面積比が1~30%あるため、材料を吹き込む型、気体・流体を強制的に通過させる型に適している。パンチング電鋳は、軟質発泡ウレタンのリサイクル型やポリエステル繊維の吹き込み熱風成形型への応用が可能。これにより、シュレッダーダストの大幅減が実現出来る。

  • 不思議な縁とものづくり

 これまでの出来事を振り返って見ると、電鋳との出会いと言い、さまざまな人との出会いと言い、不思議な縁で結びついているとしか言えないことが多い。

 日本人の持っている縁、おあてがい、陰徳を積む、一期一会、自然法爾などの考え方が、近代的なものづくりに通じると思っている。調達においても、数値だけに頼った数値本位の調達は間違いだと思う。

  • 福利厚生

このような考え方は、福利厚生や会社経営に具体的に表れているので、それらを列挙する。

  • 禁煙手当 禁煙すれば5,000円支給する。
  • お産手当 30万円/人支給。
  • 食の安全を重視し、会社で給食を行っている。
  • 売上と利益を社員に開示し、それに基づいたボーナスを支給。
  • リターン制度 一旦退職した人でも、本人が希望すれば再雇用する。高卒限定だが、今までに6名再雇用した。

  ここから質疑応答の時間を持ったが、その後のパーティーを含めて質問・意見が多数出された。以下に要点のみ纏めた。

  • 技術革新によって会社が現在のレベルに達し、今後も発展の原動力となると思うが、技術革新は今後どうやって進めて行くのか? 顧客のニーズ取り込みか、あるいは技術そのものの進歩を指向するのか?

→電鋳が会社の使命であるので、これをどうやって発展させるかが目標である。社員や顧客の意見を良く聴き、これをトライアルで確認する。それを続けていけば、どこかで新しいジャンプに結びつくと確信している。

  • シボ張りの仕事は熟練度が必要だと思うが、どうやって社員を選んでいるのか?

→AB型の社員が最も向いている。入社時に小さなサンプルを、制限時間5分以内で作らせ、その結果を見て配置するかどうかを決めている。

  • 工場見学で見た社員の机が、一方向に向いていたが何か理由はあるのか?

→方位学から机の向きは決めた。

  • 後継者についてはどう考えているか?

→息子二人が会社に勤めており、彼らに繋げたいとは思っているが、皆がそう思うかどうか。トップは、社内、地域など色々な面での調和を図れることが大事である。

野田社長の講演内容およびその後の質疑での回答は、一代で企業を興しただけあって、経営理念・経営哲学が明確かつ個性的で、強い説得力があった。全くのゼロから会社を興し、オイルショックで注文が激減するなかでも、電鋳技術の開発を継続した先見性と意志力は並外れている。開発した電鋳技術そのものも、世界に誇るレベルであり、国境を越えて自動車会社と取引を行うことが出来たのも、極自然に納得出来た。

また、会社を発展させたポーラス電鋳技術に胡座をかくことなく、次の発展のために必要な技術を継続して開発しているのは、技術志向の会社とは言え、現在の規模ではそんなに楽なことではないと推測される。それを敢えて実行するのが、この企業の強さの根源ではないかと感じさせた。

参加した企業の規模や置かれている競合環境は異なるものの、野田社長の考え方は、ものづくりに携わる企業が忘れてはならない技術の本質を突いていることを痛感し、再認識させる得難い機会としての訪問となった。(文責 相馬和彦)

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