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脚光を浴びる太陽電池の開発、事業化とビジネスモデル / 桑野 幸徳 氏

 2010年度後期「イノベーションフォーラム21」の第3回は、三洋電機元取締役社長で、現在は太陽光発電技術研究組合の理事長をなさっている桑野幸徳さんの「脚光を浴びる太陽電池の開発、事業化とビジネスモデル」と題するお話であった。
桑野さんは、アモルファスの研究開発において多大な成果を上げた研究者であり、世界で始めてアモルファス太陽電池を開発、実用化された方だが、三洋電機の経営トップとしても活躍された。
 お話は世界のエネルギー問題から入り、“成長の限界”から“地球の限界”の時代に来ていて、それを考慮してすべてを前進させねばならないと強調された。その解決策の最たるものが太陽エネルギーである。
 三洋電機に入社し、中央研究所に配属されたが、独自性に拘るようにとの研究所の方針で、桑野さんは異端の物質であるアモルファスを研究対象に選んだ。しかし10年も続けて成果が出ず、所長に止めたいと申し出たが、止めてはいけないと厳命され、ちょうどオイルショックの時で、エネルギーに向けて開発したらどうかとの言葉で、太陽電池に改めて挑戦することにした。
  太陽電池でも苦労の連続であったが、電卓用の電池に向けて実用化を進めて、少しずつ市場が拡がって研究開発を続けることができた。確かに日本は、日本のオリジナル製品で世界市場を独占した電卓の存在が、非常に長期になった太陽電池の開発に大きなプラスになった。                                
 1990年代に入って、太陽光発電へ向けた実用化が始まったが、家庭用発電装置への通産省の助成制度、電力会社の系統に組み込んで購入して貰う制度が普及に必要不可欠であり、業界として懸命に働きかけて実現させたと苦労話をされた。社会に向けたシステムでは、このような制度が実用化、普及を進める重要な条件になる。
 そして日本は、世界を圧倒的にリードする太陽電池・太陽光発電大国になった。ところが周知のように、わずか3-4年の間に、中国・台湾、欧州勢に追いつかれ、抜かれてしまった。その最大の原因が、ドイツが通常の電力価格の3倍もの高い価格で、太陽光発電電力を購入するFIT制度を導入して、スペインなどが加わり、欧州で市場が一気に拡大したことである。そこで、ドイツ、米国、中国の企業が生産を急拡大して、上位を独占していた日本企業を蹴落とした。しかも日本は、補助制度を止めてしまった不利があった。なお、欧州市場でなぜ中国に敗れるのかを討議の時間に聞いたのだが、中国では輸出製品への17%もの補助を出していて、価格競争が不利であるとのことであった。これは見逃せない大きな問題である。
 だが、太陽光発電はこれからであり、技術の蓄積が大きい日本は、再び世界をリードできるはずだ。まず日本での可能性だが、住宅に加えて事業所、公共施設などにフルに設置すると、236GWになる。1GWは100万kWであり、原子力発電所1基分である。発電の効率が低いことを考慮すると5分の1にせねばならないが、原子力発電所50基分になり、非常に大きい。
 世界全体では、現在の産業規模は約2兆円だが、5-10年内に10兆円になり、これは、現在の液晶パネルの8、5兆円を超える。
 地球規模で見ると、広大な砂漠への設置が大きな可能性をもたらし、2010年の全世界のエネルギー消費は、全砂漠の4%の面積で賄えるという。そこで、桑野さんが早くから提唱されたジェネシス計画が必要になる。超伝導ケーブルで、太陽光発電電力の世界ネットワークを築くのだ。十数年前の雄大な構想が、こらから可能性としても見えてくる。
 最後に、グローバル大競争の中で日本はどう戦うかという話をされた。日本が抱えているハンディキャップとして、1)高いインフラコスト、2)高い企業の社会コスト負担、3)早い変化に対応できない各種の制度、4)非効率的運営の四点を挙げ、その対応として、1)真のグローバル化(M&BOPビジネスを含めて)、2)質と量への対応、3)早い変化に対応、4)地道な技術開発の四点を挙げた。M&BOPは、ピラミッドのミドルとボトムの意味であり、いまの日本は、ピラミッドのトップとミドルを狙っているが、40億人の人口を抱えるボトムにも目を向けるべきとの主張である。それは、質ばかりではなく量も狙うべきとする説であり、これは日本にとって根本的に重大な問題である。
 「時代は国家イニシャチブによるグローバル大競争時代」とするお話で締めくくった。確かに、環境・エネルギー、輸送、水などの社会インフラが国際競争の最も重要な領域になるのであり、国の果たす役割が非常に大きくなるのは間違いない。太陽電池産業も国家戦略が不可欠であるというのは、きわめて重要な主張である。
 全体を通して言えば、技術的な深さ、視野の広さ、そして将来への時間軸の長さを合わせ持った素晴らしいお話であった。

(文責 森谷正規)



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