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求められているデザイン ドリブン イノベーション

と き : 2010年05月12日
会 場:東京理科大学 森戸記念館
ご講演 : (株)GKデザイン機構 代表取締役社長 田中一雄 氏
コーディネーター : 放送大学 名誉教授 森谷正規 氏

 「21世紀フォーラム」の2010年度第4回例会は、GKデザイン機構代表取締役社長の田中一雄さんの「求められているデザインドリブンイノベーション」というお話であった。まずは、GKデザイン機構が目指しているデザインとは何であるのかを、これまでのさまざまな事業を通して示された。

 デザインは、その意味するところは非常に広いのだが、作る製品をより美しくよりスマートにするのがデザインと一般的には受け止められることが多い。しかし、デザインは本質的には、より広くより根本的なものであることの認識が重要であり、その面で、日本企業はデザインの価値を再認識しなければならないはずである。

   デザインをビジネスとするGKデザイン機構は、価値創造産業であるとして、それは、社会的価値、文化的価値、経済的価値によって構成されるとする。そこで、事業の幅は非常に広い。製品のデザインでは、初期の著名になった成果として、キッコーマンの卓上の醤油ビンがあるが、非常に優れたデザインは、長く生き続ける。日本では少ないケースだが、企業が作るほぼ全製品のデザインを受け持つのが、ヤマハのモーターサイクルであり、ダイナミックな機能美を表現する。

 大きなものでは、JR東日本の成田エキスプレスなどの車両がある。赤と黒の斬新なデザインだが、これは都市の顔になるものだ。JALのファーストクラスのリクライニングシートもデザインしたが、これは倒しても後ろのシートの方に伸びず、迷惑にはまったくならないという機能性がある。バス停の広告は、GKの提案によって始められたものであり、デザインは新たな価値の創造でもある。

 三洋電機では、全製品に共通するコンセプトとして「Think GAIA」を創り出して、環境、エネルギー、ライフスタイルを通してのデザインによる企業価値の創造を提案した。それによるさまざまな製品のデザインを写真で紹介されたが、全社的な顕著な変化が見受けられた。愛知地球博では、「里山の宴」のコンセプトを創った。博覧会の中の各種の設備を3R(Reduce,Reuse,Recycle)を基にデザインしている。富山市のLRTは、都市の新しい輸送機関としてのあらゆる面からのデザインである。

 まさしく、デザインは非常に広いものであり、いまの時代では、社会、文化、経済のすべての価値から出発することが必要であると実感した。

デザインとはのまとめとして、「潜在的なニーズを発見し、機能的かつ美的にまとめる」、「統一性あるイメージをつくり、具体化して、メッセージとして伝える」の二つを挙げられた。

 後半は、世界各国のデザイン事情に関するお話であり、それは、いまでは遅れている面がある日本のデザインについて、震撼とさせるものであった。
 中でも韓国とくにサムスンのデザインへの猛烈とも言える取り組みが、驚くものであった。サムスンのテレビはデザインが優れているのは知られているが、いまではサムスンは米国のデザインに関する賞を次々に受賞するほどに力をつけていることを知った。李健熙会長が、早くも1993年にデザインが製品の優位性を生み出す根源であると認識して力を注ぎ始めて、96年には社内にデザイン革命を起こすと宣言し、すべての役員に3カ月のデザイン研修を命じたとのことである。まさしく、企業の革命であった。
 サムスンは、80年代の後半から米国市場に参入してきたが、当時は日本が圧倒的に強く、そこで日本企業に太刀打ちするために販売、ブランド確立などあらゆる戦略を考えたに違いない。その中でデザイン戦略を発見したのだろう。会長の至上命令で、日本企業では考えられない集中的な努力を投入するのが、韓国企業の恐ろしさであり、デザインがまさにそうであった。
 また、田中さんが審査員をしているドイツのブラウンデザイン賞についてのお話があったが、日本の国際性の欠如について愕然とさせるものであった。この国際的に著名な賞に、中国、韓国、台湾などアジアからの応募が非常に増えているのだが、日本からはほとんどない。若者たちの間で、海外に打って出ようとする者が非常に減っていることを如実に示すものだ。
 このブラウンデザイン賞を受賞した優秀な作品を数多く紹介されたが、それらには想像をはるかに越える新しさがあった。その評価基準が、これからのデザインのあり方を示すものであった。評価は3ランクあって、第一は、モノとしての基本である良いデザインであるかどうか、第二は、基本を越えて優れたデザインであるかどうか、そして第三は、明日を拓くデザインであるかどうか、である。韓国、台湾、中国の追い上げが厳しい日本は、これからは、明日を拓くデザインを目指さねばならない。

 6月15日 森谷正規

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