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省エネの液晶、創エネの太陽電池 シャープの21世紀ヴィジョン

と   き : 2009年2月13日
訪 問 先 : シャープ(株)亀山工場
講   師 : 取締役 専務執行役員 太田賢司 氏  
コーディネーター: 相馬和彦氏 (元帝人(株)取締役 研究部門長)

 2008年度後期の第5回は、平成21年2月13日にシャープの亀山工場を訪問した。 
シャープ亀山工場は、開発部門と生産部門間で密接な擦り合わせが常時行われることを狙い、又、デバイスと商品を互いに競わせ、部門の壁を超えた‘ものづくり’の強みを発揮させることを狙い、徹底した生産革新と物流及び生産・検査工程の合理化を図った世界初の画期的垂直統合型液晶テレビの一貫生産を実現した工場で、この最新鋭液晶工場建設時には海外競合企業の注目の的となり、工場資材搬入時の隠し撮りをされるなど新聞報道されたことはまだ記憶に新しい。
 そもそも1953年、国産初のテレビを生み出したのも、又“ブラウン管から液晶へ”の流れを加速させて液晶テレビ市場を切り開き、大型液晶テレビ市場を自ら開拓して来たのもシャープであった。
又、2005年12月、同社の電卓技術開発はその後の半導体と液晶の発展の起点ともなった「歴史的偉業」であったとIEEEより認められ、「マイルストーン賞」を受賞した。
   創業時、シャープペンシルからスタートした同社であったが、時代を画するヒット商品を辿っていくと、液晶にしてもその前の光ピックアップ用半導体レーザーにしても、何れも必ずシャープのデバイスに行き当たる…、というのは何故だろう。ソニーがCD開発時、その肝心のソニーは未だ半導体レーザーを持っていず、ソニーが開発した世界初のCDプレーヤーにはシャープの半導体レーザー(世界初)が搭載されていたのである。
以上のような背景もあり、今回の亀山工場の訪問は大きな期待と共に、長い間、同亀山工場には外部者立ち入りが困難であったことも反映されたためか、参加者数は72名と最近の研究会では珍しい多人数となった。
最初に取締役 専務執行役員で技術担当の太田賢司氏より、「省エネの液晶、創エネの太陽電池」 ~シャープの21世紀ビジョン~ と題した講演をいただいた。シャープは1912年に創業され、2007年度の売上が、単体で2兆7688億円、連結で3兆4177億円に達している。従業員は同年度の単体で約22,000人、連結で約50,000人の規模である。
業務内容は技術の進歩および時代の変化によって発展し、1958年にはテレビ、ラジオ製造、1976年にはこれに音響製品が、1986年には更に情報機器がプラスされ、この年に部品から最終製品までの垂直統合生産に踏み切った。1996年には、更に携帯機器が追加された。この間、アセンブリ生産から電子デバイス生産へと業務内容が発展すると共に、部品の垂直統合生産が加速された。
   1998年8月には、当時の社長がブラウン管テレビ全廃を宣言し、思い切った発表に社内に衝撃が走った。その後社内で液晶技術の進歩と製品開発を可能にしたのは、このトップダウンによる社内の意思統一が原動力となった。この宣言の伏線として、社内ではその10年前に、LSIから液晶へ軸足をシフトしていた事実があった。2001年には最初の液晶テレビの発売に漕ぎ着け、それ以降液晶へのシフトが加速した。当初は、20型から26型までは液晶で行けると踏んでいたが、30型以上は別方式の可能性があると予測しており、現在のような大型にまで液晶が普及するとは思っていなかった。15年前頃から、携帯などの液晶応用製品が拡大したことが、その後の液晶テレビの追い風になった。

   液晶の生産は最初枚様式が有力であったが、生産速度から枚様式では無理と判断し、ガラスの大型化へ切り替えた。G4時代(68x88cm)に次のG6(150x180cm)を検討するなど、常にその次を狙った技術開発を継続実施した。シュミレーションではG8(216x246cm)が限界と考えられたが、堺工場の新設備ではそれを超えるG10(285x305cm)を予定している。
ブラウン管の時代には、シャープはブラウン管を他社から購入してテレビを組立てており、自前のものを持ちたいという願望を長い間持っていた。それが液晶で漸く実現した。液晶の開発にはそれだけの思いが込められている。
今後の技術開発としては、二つの方向を考えている。
①環境、エネルギー、健康にエレクトロニクス技術を応用する。
②太陽電池の普及。多結晶でスタートしたが、薄膜、化合物、集光など様々な技術を検討しており、この中の薄膜は堺工場で生産を予定している。太陽電池事業は、2007年までの累計で2GWに達し、事業規模としても1,500億年のビジネスに発展した。
亀山工場は敷地が約10万坪あり、液晶第一工場が2004年から、第二工場が2006年から稼動している。様々な省エネ設備、安全対策設備を保有していて、太陽光発電で5MW、コジェネで24,400KW、燃料電池で1,000KWを供給している。燃料電池は国内で最大規模。瞬時電圧低下防止対策として、超伝導を利用した技術を使っているが、これは世界でも最大規模である。工場廃水は100%リサイクルされ、第一工場で13.5Kton/D、第二工場で33.0Kton/Dに達する。また地震、落雷などに対する防災対策、エネルギー源安定対策も行なっており、設計時から災害が起こっても数日以内で立ち上げ可能な目標を立てていた。実際に地震があったが、第一工場は翌日、第二工場は当日夜には立ち上がった。
堺事業所は環境配慮型のコンビナート構想に基づき、液晶と薄膜太陽電池の生産を予定している。敷地は127万㎡(38.5万坪)あり、2010年3月の稼動を予定している。海岸にあるため、津波や高潮対策も必要であり、地震対策は亀山と同じ対応を取る。
今後の開発方針の進め方としては、以下のように考えている。
①環境・エネルギー分野で、シャープ一社の単独実施ではなく、他の組織とのオープン・イノベーションを追求する。
②グローバル展開では、その地方の通念、文化、風土に合った展開を行なう。
太田専務の講演終了後、限られた時間内ではあったが、質疑応答を行なった。エレクトロニクス分野は、近年新規の大型商品がなかなか出にくくなっている。またメーカーは従来ハードの製造販売をメイン事業として来たが、netbookの躍進やビデオ・オン・デマンドの進歩など、ネットの普及と高速化によりハードの役割が低下しつつある。そのためハードを売るだけでなく、iPodのように使い方やソフトとハードの融合(iTunes)も考えないと、今後の伸びが困難な変化が起こりつつあるように見える。このような環境下で、シャープは今後どのような技術開発・事業展開をおこなっていこうとしているのかを質問した。これに対して太田専務からは、①先進国では新製品が難しいので、発展途上国で必ずしも先端技術でないものでも、その地域に適したものをグローバル展開する、②日本国内では、異業種と組んだ境界領域での展開を考えており、研究者も研究所内に閉じこもるのではなく、今までの領域から一歩踏み出す、という極めて率直な回答を得た。
ビデオによる工場概況の説明があった後、3班に分かれて工場見学に移った。見学した設備の概要を以下に纏めた。
①コジェネ設備
ガスエンジン発電機が5台あり、都市ガスを使用している。
②燃料電池
Fuel Cell Energy社(米国)の燃料電池が4台設置されていた。
次いで第二工場に移動し、設備および展示品を見学した。
③制震ダンパー
地震対策として建物に組み込まれている制震ダンパーの実物を見た。第二工場には全部で500本設置されており、震度7の揺れを震度1に制震出来るとのこと。実際に起こった地震でダンパーが少し動いた後が残っていた。
④108型の超大型液晶テレビなど、最新鋭の商品展示。
⑤シャープペンシル(1915年)、白黒テレビ(1953年)、電卓(1973年)、液晶テレビ(1987年)など歴史的な第一号機の展示コーナー。
⑥液晶の原理説明パネル。
⑦新型アクオスの展示。画像が極めて鮮明で綺麗。
⑧インフォメーション・ディスプレイ
⑨シートコンピューター、CPU(8ビット、2002年)、携帯ゲーム用ディスプレイ、3Dディスプレイ、デュアルビュー・トリプルビュー液晶ディスプレイ、インパネ液晶などテレビ以外の部材・液晶ディスプレイ。
⑩液晶製造工程
液晶製造工程の一部を窓から覗いた。従業員は見られず無人。ただ製造スケジュールの関係で、機械は動いておらず、実際の工程詳細はビデオで見た。
⑪屋上の太陽光発電システム
工場の屋根を太陽電池が覆っている。47,000㎡で5150KWの発電能力がある。得られた電力で噴水を飛ばしているが、丁度曇天だったため噴水の勢いは弱く、天候の影響が如実に観察された。

   本日の講演および工場見学で見られたように、常に新しい技術に挑戦し、それを市場へ提案し続けるシャープならではの企業風土、ものづくりへの思いを強く感じることが出来た。「需要は自らつくるものである」(辻元社長)のような言葉がどんな風土から出てきたのか長年知りたいと思っていたが、本日の太田専務の講演から、その一端をうかがうことが出来た。今日のエレクトロニクス産業を取り巻く環境は、極めて厳しいものがあるが、シャープの企業風土であれば、これからも変化に立派に対応していくであろう。ものづくりの基本は独自の技術開発にあることを再確認し、また部品開発は他社に任せ、自社では組立をやっていれば良いという近年の風潮に対する警鐘も実感することが出来て、期待通りの有意義な訪問となった。

(文責 相馬和彦)

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