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わが国航空機産業の悲願、国産旅客機事業の創出に挑む

と き :2008年10月9日
会 場 :森戸記念館
ご講演 :三菱航空機(株) 取締役社長 戸田信雄 氏
コーディネーター:LCA大学院大学 副学長 森谷正規氏

 

 21世紀フォーラム2008年度(後期)の第2回は、三菱航空機取締役社長である戸田信雄さんの「わが国航空機産業の悲願、国産旅客機事業の創出に挑む」と題するお話であった。良く知られているように、三菱重工業は座席数70-96の小型ジェット旅客機MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)の開発、事業化を決めた。三菱航空機はそのために設立された会社である。戦前はゼロ戦を作って世界でも冠たる航空機産業を持っていたのだが、戦後になってGHQに航空機の開発,生産を全面的に禁止されて、航空機産業は壊滅した。やがて、開発禁止が解けて、ターボプロップの小型旅客機YS11を開発して事業化した。これは、性能は悪くなかったのだが、世界市場での販売はなかなか進まず、巨額の赤字を出して事業を閉じた。その後は、国産旅客機の開発は強い願望であったのだが、リスクが非常に大きいために手が出ず、いまになってようやく本格的な旅客機への進出が可能になったのだ。MRJは2011年に初飛行し、13年から納入を開始する予定である。
 三菱重工業の経営トップは、リスクを覚悟しての決断をしたのだが、戸田さんは淡々と話を始めた。まずは、MRJがいかなる旅客機であるのかを詳しく説明する。このクラスには、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルがあって競合相手になるが、MRJは、燃料消費率が少ない利点で勝負するという。P&Wの新しいエンジンを採用して、3割も燃料消費を減らすのである。原油価格が高騰しているいま、これは販売の強い武器になるに違いない。もう一つ、騒音もかなり減少させた。つまり、環境にとって好ましい旅客機であり、それはいまどうしても必要な条件だ。
 燃費を良くするためには機体の軽量化が必要だが、それは主翼にCFRPを用いることで実現した。三菱重工業は、ボーイングから委託を受けて生産する中型旅客機の主翼などにCFRPを採用してきており、技術力は非常に高い。なお、胴体はCFRPではなくアルミ系の材料である。それは、比較的短距離であるから空港の離陸、着陸の回数が多く、空港内を走る自動車がぶつかる事故の可能性があるので、修理の容易なアルミ系にしたとのことである。

   次ぎに世界の航空機産業について話された。米国が圧倒的に大きいのだが、日本は、英仏のほぼ3分の1の産出高であり、次いでドイツ、カナダだが、これは間もなく抜けるという。米国にはこれからも適わないが、MRJを契機に、日本は主要な航空機産業国の一つへ進むことになる。日本の航空機産業は、米国が開発したジェット戦闘機の生産が中心の防衛需要を柱にして発展してきたが、ボーイングからの委託生産によって、いまでは民間需要がほぼ半分を占めるようになっている。これからは民需が主になっていくことになる。
 なお、三菱重工業は、ゼロ戦を作っており、戦前には軍用機ではトップの企業であったが、戦前の最盛期には年間4000機の航空機を生産したと聞いて驚いた。日本は、戦闘機の性能は優れていたが、生産力が米国に大きく劣っていて敗れたと聞いていたので、その生産量の大きさに驚かされた。ということは、米国はもっと凄かったのだ。
 今後の展望としては、これからの14年間に1000機の受注を取って生産していくとのことである。1000機は生産額としては、4兆円になる。さすがに巨大であり、1800億円ほどになる開発費が充分に回収できる。このクラスの旅客機にはこれからの20年で5000機の需要があると言われており、まずは30%のシェアを取り、さらに大きく伸ばしていくという目標を立てている。カナダ、ブラジルに加えて、ロシアと中国がこのクラスに参入してきて、五つの国での争いになるが、勝算はあるようだ。
   質問、討議に入って、大きなリスクを賭けることになる事業に挑戦する経営者の決断がいかなるものであったのかを質問した。
   一般には、販売が500機にも満たないと巨額になる開発投資が回収できないリスクが言われるのだが、現実には、事業を開始すると巨額の生産投資を行うので、さらに大きな損失を被ることになる、そのリスクも充分に考慮して、踏み切ったとのことである。
淡々と話されたが、経営陣の決意のほどが良く分かり、全力を上げて事業を成功させる覚悟であると分かった。三菱重工業としては満を持しての事業化であり、何としても成功させる自信があっての出発であると感じ取れた。MRJが日本の航空機産業を世界に伍するまでに発展させる出発となることを期待したい。

(2008年11月 森谷正規)

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