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たたら操業見学会

と   き : 2008年2月8日(金)~9日(土)
ご 講 演 : (株)安来製作所 代表取締役社長 岡田 重康氏
      和鋼博物館館長 八十至雄氏
訪 問 先 : 奥出雲の鳥上木炭銑工場

 2008年2月8日(金)~9日(土)、新経営研究会では、わが国における‘技術・製品開発’、‘ものづくり’の第一線で指導的立場にある有志25名が相集い、(財)日本美術刀剣保存協会様、日立金属(株)様のご高配を得て、「たたら操業見学会」を催した。これは、今日のわが国の‘技術・製品開発’と‘ものづくり’の在り方をここで一度本質的に問い直し、原点に立ち返って今後の方向を求めようとしたものである。

 2月8日(金)12時、安来市の「和鋼博物館」に集合し、館長 八十至雄氏より「日本古来の製鉄法 たたら製鐵」と題するご講演を伺い、同館見学の後、奥出雲の鳥上木炭銑工場にて(株)安来製作所社長 岡田重康氏より「たたら製鐵の実際」についてご講演いただき、15:45~16:30、 「たたら操業の大詰め」 を見学させていただいた。
 翌2月9日(土)は早朝3時30分起床、4時過ぎに玉造温泉宿を専用バスで出発し、05:20~07:00、たたら操業のクライマックス 「釜崩し」 を見学させていただいた。

 それは、古来から受け継がれる‘神事’に立ち会っているような、正に魂を揺さぶられる感動であった。

 そこには、私達が近代化の過程でいつか切り捨て、ふるい落として来た、若しかしたらもはやそれは取り返しがつかないかも知れない、余りに大きな、掛け替えのないもので溢れているように思えてならなかった。

 「たたら製鉄」は砂鉄を原料とした日本古来の製鉄法で、今回訪問させていただいた奥出雲の「鳥上木炭銑工場」は、現在たたら製鉄が行われている世界唯一の操業所である。

 日本刀は、この「たたら製鉄」によって生産された「和鋼」から取り出される良質の玉鋼を素材としてつくられる。

 この「たたら製鉄」は、明治初期頃に最盛期を迎えた日本古来の製鉄法だったが、西洋より高炉が移入されて生産効率で太刀打ち出来ず、一旦は途絶えかかっていたのを、(財)日本美術刀剣保存協会(略称:日刀保)が、刀剣類の素材である和鋼の安定供給を目的に復元計画し、日立金属(株)の協力を得て復活させたものである。

 その至難の復活を可能にしたのは、往時の村下(たたら操業の技師長に当る方)安部由蔵氏と久村勧治氏が健在であったこと、又、(株)鳥上木炭銑工場に往時の高殿と炉床の遺構が残存管理され、炉の詳細図面が保存されていたことに拠るという。

 たたら操業は村下の勘で全てが決まる。

砂鉄と木炭はほぼ30分おきに投入されるが、その投入すべき砂鉄と墨の量、タイミングは、村下の時々刻々に変化する炎の色の変化の判断によって決まるという。1回の操業で使用される砂鉄は8トン、木炭は13トン。2月8日(金)、3昼夜、約70時間に及ぶ過酷な作業の最後の大詰めを見学させていただいた。村下はノロの出方でケラの成長を判断する。.
 2月9日(土)、たたら操業のクライマックス「釜崩し」を見学。炉底一杯にケラと呼ばれる鋼塊が出来る。炉の側壁はこれ以上耐えられない程に侵食されて薄くなっており、村下の判断で操業を停止する。
 炉を壊し、真っ赤に焼けた炭と渧を掻き出し、高熱と粉塵の中、轟々と豪快な火花を散らして真っ赤なケラが顔を出す。この約3トンのケラから1トン程、約1/3の玉鋼が取れ、日本刀の材料となる。

 木原村下の話によると、今回のケラは厚みも形も良く、たたら操業は成功だったということだった。

 この「たたら製鉄」によって高純度の鉄が生まれる仕組みはまだ科学的に解明されていない。
 しかし、この 「たたらの地下構造」 と 「築炉技術」 に表れる先人の知恵と工夫には、目を見張るものがある。

 八十和鋼博物館長の話によると、たたら1回の操業に必要な炭の量は約13トン。これを森林面積に換算すると1ヘクタールとなり、たたら操業が盛んであった江戸後期~明治初期の年間操業回数はおよそ60回、しかも炭焼きに適した樹齢は30~50年というのであるから、たたら操業1ケ所当り約1.800ヘクタールの森林面積を必要とすることになる。
 又、今日の鉄の需要をまかない切れる程の生産性は、この「たたら製鉄」には残念ながらない。
 
 しかし、人類の未来社会に、今、計り知れない可能性を開こうとしている今日の科学技術の発展は、一方で地球環境やエネルギー問題、そして私たち人間の心とか文化といった、人類の未来に関わる根本問題と直面し、今日様々な矛盾と危機を露呈し始めている。

 そして、生命感、実体感の喪失感と、それらに対する癒し難い深い渇き…、今、近代に対する深い疑問が台頭しつつあるように思う。

 この近代化の過程で私達がいつか切り捨て、振るい落として来た、余りに大きく、掛け替えのなかったものが、この‘たたら操業’の中にある。
 この‘たたら操業’に横溢する精神と思想、全人間的営みを、再び現代に回復させたいものである。私は、その人間の努力と可能性を信じたい。(新経営研究会 代表 松尾 隆)

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