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ゼロエミッション、資源完全活用型循環リサイクル事業の創出

と き:2007年5月16日
講 師:株式会社トクヤマ 常務取締役 松井悦郎氏
コーディネーター:LCA大学院大学 副学長 森谷正規氏

 2007年5月16日、東京神楽坂の東京理科大学森戸記念館において、'07年度前期「21世紀フォーラム」第3回例会が開催され、「ゼロエミッション、資源完全活用型循環リサイクル事業の創出」と題して、株式会社トクヤマ常務取締役 松井悦郎氏による事例発表が行われた。
「ゼロエミッション」は、企業が、今、環境保全に最大限の努力をするに際して最も重要なキーワードの一つである。株式会社トクヤマの常務取締役である松井悦郎さんのお話は、まさにそれを実践するものであった。トクヤマは1998年にソーダ灰で事業を興して徳山曹達として知られてきた化学メーカーであるが、無機化学から石油化学へと進んできて、今では多結晶シリコンのトップメーカーになって、素材の広い分野で大活躍している。松井さんは最初に、創業以来の会社の歴史を詳しく紹介されたが、この会社の場合それは大きな意味があることであった。
 先ず、一社一工場であり、創業以来ずっと徳山に立地した工場ですべての事業を続けてきたという点で、驚かされた。鹿島にも工場があるが小規模であり、殆どの生産が徳山にある三つの工場で行われており、これらの工場は隣接していて、一工場といえる。
 トクヤマは、創業以来“もったいない”を合言葉にしていて、ケチな経営を実践して来たという。それが、一社一工場で実現された。初期の事業であるソーダ灰から出る副産物を活用するために、セメント事業を興したのである。それ以来、“もったいない”精神に基づいて、副産物は極力利用しようと努力して来た。それが事業拡大の柱であった。
 副産物の活用は、一社一工場であるから可能になる。バルキーな産物が多いので、遠くに運べば輸送費がとても高くなる。三つが隣接していて、海を隔てた工場は地下トンネルで結ばれているので輸送費はタダだ。工場は三つに増えたのだが、これがまた副産物の活用である。利用できない廃棄物で埋め立てを行ってきて、工場が次々に拡大されて大工場になってきたのである。
 トクヤマでは、非常に多様な生産物が様々様々なかたちで結ばれている。それを松井さんは、インテグレーションという言葉で紹介されたが、会社全体が1つの有機体になっているように思えた。有機体は複雑な構造をしているが、各部分は結ばれていて、決してむだな部分がないのである。一社一工場であるから、有機体として機能していくことが出来るのだ。
 “もったいない”はかつてはしばしば聞かされた言葉であるが、安く大量に生産できる時代になって忘れられていた。だが、この2〜3年来、再び注目されている。環境保全のためには必要であると認識されたのだ。創業以来の“もったいない”精神を忘れていないトクヤマは、ゼロエミッションでは全体で99.8%という素晴らしい成果を上げていて、ほとんどゼロである。
 経済、産業の大発展の時代には、各企業は有望視された分野に次々に進出して事業を拡大し、それにともなって新設された工場地域に新工場を設けて来たのだが、それに比べてトクヤマは地味な経営のように見える。だが、有望な新素材の分野にも次々に進出して積極的な展開をしている。その代表的なものが、多結晶シリコンであり、半導体から太陽電池と需要は拡大するばかりであり、トクヤマの最大の利益源になっている。その新分野開拓で、ユニークな表現があった。“出来ちゃった”というのであり、多様な研究の中から可能性があるものがたまたま生まれると、それを事業化するために関連する多くの部門が懸命に協力していくのである。これも有機体の現われといえる。
 最近生まれたユニークなビジネスが、廃棄物をセメントの原料、燃料として利用することである。これは理想的なリサイクルであり、汚泥、残土、石炭灰、廃液などを原料に廃プラスチック、重油油、廃タイヤ、木屑などを燃料として活用している。これはビジネスだが、社会貢献でもある。なお松井さんは、CSR推進室長でもある。このまったく新しいタイプのビジネスでは、新しい人材が必要になり重要な役割を果たす。廃棄物活用のセメントは、品質はどうなのかと問うたところ、廃棄物の適切な配合があれば、品質には問題はないとの答えであった。そこで重要であるのが、廃棄物を受け入れる部門の要員であり、個々に異なる廃棄物の成分を厳密に把握しなければならない。高度な知識、ノウハウを持った新しい人材が必要になるのである。
 トクヤマが優れているのは、多様な人材の活用である。松井さんは“鎮守の森”というユニークな表現をしていたが、日本伝来の古き良き組織のことであり、様々な人々が一体となって、密接に協力をしながら目的に邁進することが出来る。トクヤマは原日本企業のように見える。それがまさしく時代に合った企業である。

(森谷正規)

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