Home > 異業種・独自企業研究会 > ユビキタス社会に向けて…、次世代電池に挑む技術開発

ユビキタス社会に向けて…、次世代電池に挑む技術開発

と   き:2007年4月20日(金)
訪問 先:日立マクセル株式会社 小野事業所
講  師:相談役、前代表取締役社長 赤井紀男氏
コーディネーター:相馬和彦氏(元帝人(株)取締役 研究部門長)

 2007年度前期「異業種・独自企業研究会」の第2回例会が、兵庫県小野市にある日立マクセルの小野事業所で開催された。地理的には鉄道の便が必ずしも良くないが、京阪神からの高速道路によるアクセスは優れており、事業所は緑や花に囲まれた大変環境の良い工業団地内にあった。当日はまず赤井紀男相談役にご講演をいただき、質疑応答の後グループに分かれてボタン電池の製造工程を見学した。講演は二部構成で、前半は日立マクセルの概要、後半は「ユビキタス時代に向けて、次世代電池に挑む技術開発」と題し、創立以来のコアである電池に焦点を当てたものであったが、同社のアナログコア技術に軸足を置いたモノづくりに賭ける思いが滲み出た内容で強い印象を受けた。以下講演内容を要約した。
 同社は1961年に日東電工から乾電池、磁気テープグループが分離独立して創業されたものであるが、社名そのものがMaximum Capacity Dry Cellと乾電池に由来していることからも電池に懸ける思いの強さが伺える。2005年度の業績は連結で売上2,041億円、営業利益56億円、従業員4,528人であり、セグメント別では材料・デバイス・電器18%、情報メディア63%、電池19%である。BtoBとBtoCが半々を占める。また海外への進出も進んでおり、売上比率で日本36%、米国32%、欧州18%、アジア14%となっている。
 アナログコア技術をベースとした新製品では世界初、国内初の商品が多く、世界初では超高性能マンガン乾電池「塩化亜鉛形乾電池」、書き換え型DVD-RAM、国内初ではアルカリ乾電池、カセットテープ、酸化銀電池、塩化チオニルリチウム電池などが列挙出来る。
  同社は事業基盤が「モノつくり力」にあることを明言しており、「モノつくり力」を支えるのは「アナログコア技術」x「人・設備・プロセス」であると明確に定義しているのはメーカーの姿勢として感服した。「アナログコア技術」が同社の国際競争力の源泉であり、今後もそうあり続けることは、講演後の質疑応答でも再確認された。
 デジタル化のなかで電池は生活の隅々にまで浸透し、まさにユビキタス社会を象徴しているが、電池の国内生産量は2006年度で58.8億個に達しており、日立マクセルでは年間8,500万個を生産している。量産化技術の確立が事業の核となるが、生産速度は毎分600個にも達している。電池そのものの歴史は古く、2000年前のバクダードの遺跡から電解液形の電池が出土し、当時既に実用化されていたことが判明している。原理は現在でも同じであり、使用される原料も簡単に入手が可能なので、電池性能とコストを支えるのはまさに技術ノウハウの塊であり、それが「モノつくり力」として同社の国際競争の基本にある。そのことがマンガン乾電池、アルカリ乾電池、リチウム一次・二次電池、酸化銀電池、更には燃料電池へと技術を発展させてきた原動力であることが、講演の中で如実に示されたのは、メーカーに働く者にとっては重要な示唆であった。
 講演終了後の質疑応答では、電池の長寿命化、リサイクル、国際競争力などに関して質や意見が出された。長寿命化ではアルカリ乾電池では5年を達成しており、リチウム電池でも現在長寿命化を開発中。リサイクルでは酸化銀は回収率が80%台と高かったが、最近はボタン電池を装着したままの携帯機器を何台も保有する人が増えてきたため、回収率としては30%台に下がってきた由。マンガン電池の資源回収はコストに合わないので、土にかえすのが最も合理的。高性能のボタン電池、リチウム電池などはノウハウの塊であるため、今でも電池本体は日本で生産し、海外で組み立てる方式を取っている。これは将来も維持する方針だとのことなので、日本の高性能電池における優位性は将来も維持可能と安堵した。  質疑応答終了後、3班に分かれて工場見学および新製品の紹介・説明を受けた。10年ほど前にもボタン電池の工程を見学したことがあったが、当時はパーツを集めて自社で組み立てた手作り感の強い装置という印象であったが、今回は各工程がユニット化されており、工程毎のノウハウが蓄積され標準化されていることが感じられた。また不良率を下げるため、工程毎に検査されるばかりでなく、最終製品の性能も全数検査されるとのことで、検査の徹底が印象的であった。生産は24時間体制でほとんどが無人化されており、「モノつくり力」を支える要素である「人・設備・プロセス」の一端を見ることが出来た。設備・プロセスのノウハウは設備設計者(人)に蓄積され、継承されていくとのことであった。
 講演会場での新製品紹介では、アルミニウム粉末を使用した燃料電池、ガラス成型で作られた広角レンズ、髭剃り刃・有機EL用マスキングなどの電着製品など、小野事業所ばかりでなく、大阪、京都、九州などの事業所および関連会社で開発している新製品が紹介され、同社の将来を担うことが期待された。本日の講演および工場見学・新製品紹介を通じて最も印象に残ったことは、「差別化」という言葉が全く聞かれなかったことである。このことは日立マクセルにおける技術開発、新製品開発が他社との比較による相対的優位性で判断されているのではなく、自社が考えた絶対的な基準を有し、その軸がぶれないことを意味しており、われわれメーカーに対して極めて重要な規範を示している。(文責 相馬)

コメント:0

コメントフォーム
Remember personal info

トラックバック:0

このエントリーのトラックバックURL
http://www.shinkeiken.com/wp/20120920/1824.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
包みの技術を軸に、多様なニーズ・材料への対応に挑む / 東洋製罐 from 新経営研究会

Home > 異業種・独自企業研究会 > 包みの技術を軸に、多様なニーズ・材料への対応に挑む / 東洋製罐

メタ情報
フィード

Return to page top