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YKK 黒部事業所 訪問見学

と   き : 2007年11月02日
訪 問 先 : YKK(株)黒部事業所 訪問
講   師 : 上席常務 黒部事業所長 松田 章氏
コーディネーター: 相馬和彦氏(元帝人(株)取締役 研究部門長)

 平成19年度後半の第四回は、長野県黒部市にあるYKK株式会社の黒部事業所を見学した。
 見学に先立ち、松田章上席常務・黒部事業所長より黒部事業所の概況説明があった。黒部事業所は全YKKグループの製造および技術の中核拠点と位置付けられており、ファスニング・工機事業の黒部工場、ファスニングの黒部牧野工場、建材事業の黒部素材・黒部越湖・黒部萩生の各製造所より成る複合的な事業所である。敷地総面積は196万平方メートル、建物総面積は122万平方メートル、従業員は6,100名である。黒部工場は昭和32年にファスナー用の生地工場としてスタートし、昭和46年に全面的に増設・改造されて今日があるが、関西電力の黒部ダム発電所からの豊富な電力供給を受けられる立地にある。
 松田章事業所長はファスナーの海外展開を担当していたが、昨年より事業所長に就任された方であり、豊富な海外経験が概況説明の端々に感じられた。YKKの事業はファスニング、建材などのモノ事業とそれを作るために必要な工機事業からなる。2006年度で売上は6,582億円、グループ会社は69ヶ国119社に及ぶ。従業員は41,000名で、約半分が日本人、半分が外国人という構成である。「善の循環」という創業者の思想がYKK精神として現在でも受け継がれている(工場見学の際、「吉田忠雄ホール」で更に詳細を拝見する機会があった)。創業者時代の役員会は、大きなホールの前方に机を並べて社長と取締役10名程度が着席し、それを200名程度の若手社員が傍聴するという形式を取った。ここで創業者の話を若手が直に聞くことによって、直接社員にYKK精神を伝える場となっていた。

   現在の海外生産比率は、ファスニング事業が92%、建材事業は24%、工機事業は10%であるが、建材事業はこれから増加する。工機は国内中心でブラックボックス化の方向である。海外事業はその国の顧客のために進出することが原則で、その国で生産したものはその国で消費している。中国に進出した当初は営業がついて来ないことも経験し、この原則の実行には困難も伴うが、コストが安いからその国へ進出することはしていない。
客に居るところに工場を作ることを原則としていたため、当初はその国ごとに現地の社長がすべてを決めることが出来、絶大な権限を有していた。現在はマトリックス制を採用し、世界6極体制で地域ごとに決めている。関係者が年に3回集り、個別事業と地域の調整を取っている。
YKKが新たに進出する国は、GDPが1,000ドル以下の国が主たる対象となる。そういう国は法制度が不備なことが多い。ポーランドの法律には、ドイツ系とロシア系の二系統が中味に混在していて元々整合が取れていない。それを守るように要求されて困惑したことがある。またバングラデシュやパキスタンでも似た様な経験をした。鍵は社員の危機意識であり、これが危険を防ぐのに役立った。政府系の重要な機関の近くは安全なことが多いなど、ノウハウも蓄積してきた。
  ファスナーは9ヶ国に12工場がある。国内生産のピークは1980年代であったが、現在ではYKK全体の8%程度しかない。世界市場4,351億円の内、2006年度のYKKのシェアーは47%の2,031億円である。世界の半分は中国で生産されており、東アジア全体では2,077億円になる。ここでのYKKシェアーは40%。中国でコストアップがあるため、中国からベトナム、カンボジアへの移転や、更には日本への回帰もある。グローバルでのアパレル生産基地は中国であるが、それをグローバルでコントロールしているのは未だに台湾、香港であることには留意すべき。
   建材としてサッシを製造していたが、それが窓そのものの製造へと変わって来た。窓としての保証はYKKがしている。
工機は基本的に外販はしていない。ファスナーや建材製造用の機械やプロセスの提供を行っている。製造現場・プロセスと一体化して開発する。アルミ、樹脂など原材料と製造プロセスに拘るのは創業者の考えで、一貫主義、現場主義を基本としている。商品開発、設備開発すべてを自社で行ってきた。
   次に工場見学を行った。まずファスナー部品工場、金属ファスナー工場を経て、工機展示場を見学した。最後に50ビル展示ホールで様々な商品とその製造法、吉田忠雄記念館を見学した。
ファスナー部品工場では、部品のダイカスト工程を見学した。亜鉛合金を年間約5,000トン使用し、部品の歩留まりは約50wt.%、ランなどを回収して酸化物を除くと、金属としての歩留まりは96%程度となる。スライダーとして年間20億個製造されるが、15億個は部品として関連会社へ供給され、5億個がここの工場でファスナーに加工される。工場内は人が少なく、かつフロアは綺麗に掃除されているのが印象的であった。
   金属ファスナー工場では、金属ワイヤーからムシをテープに植え付け、それにスライダーをつけてファスナーに加工する工程を見学した。金属部品のみならず、テープも自社でPET樹脂から紡糸した糸を織って作り、染色したものであり、縫い付けるモノフィラメントも自社で紡糸するなど、一貫主義が現場に徹底しているのを見ることが出来た。ファスナーの色、サイズ別で100種類程度のファスナーが製造されているが、工程毎の歩留まりは99%とのことであった。この工場も人は少なく、綺麗に掃除されていた。
工機展示場では、開発された技術の概要を聞くことが出来た。超硬材料の研究を行っており、粉体は購入して焼結条件を検討した結果、表面改質によって1ヶ月の金型寿命を1年に延長出来た。これのMIM化も検討している。また製造工程で使用するソフトも自社開発している。
  展示ホールでは、創業者吉田忠雄氏の歩みと思想を示す様々な資料を見ることが出来た。「善の循環」や「成果三分配」、「形あるものは消えるが、考え方は永遠」など、YKKに今も生きる創業者の考え方が良く理解出来た。
今回はライトパーティがなく、YKKと参加者との交流時間が短かったにも拘わらず、YKKという極めてユニークな企業文化と製造現場、そしてそこで働く方々と触れ合うことが出来たのは、貴重な体験となった。GDPが1,000ドル以下の国に進出し、事業を軌道に乗せるまでには、多大なご苦労があったと推測され、それらの体験談を別の機会に伺いたいという強い期待を持った。
(文責 相馬和彦)

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