第1章

岡本三宣氏

高度複合技術への挑戦

世界初超極細繊維 エクセーヌの開発

東レ(株) 繊維研究所・エクセーヌ研究室長 岡本三宜氏
  1983年3月10日


はじめに

エクセーヌのプロフィール

-一握りの量で月まで届く超極細繊維-

海外におけるエクセーヌの評価

-織機以来の最大の発明 米WWD誌-


エクセーヌの開発と商品化

基本技術確立の時代と常識打破の時期

エクセーヌを使った製品

 ニーズとシーズ

 -全く意図しない所で事業化の契機が生まれ、
   大きく育てられたエクセーヌ-

 皮革に対する日米欧の馴染の違い

 天然スエードの構造と当時の人工スエードの技術状況

 極細繊維から生まれた新規スエード構想

 常識の壁を打破できた2つの基本技術の確立

 革新技術の集積 エクセーヌの製造方法

 エクセーヌの特徴

研究・開発の背景

「高分子相互配列体繊維」の特殊紡糸法

 繊維内部構造への志向

 構造巻縮に注目

 わが国初の複合紡糸に成功

 高度複合技術への挑戦

 高分子相互配列体繊維の本格的研究に着手(第三の山)

 -エクセーヌ第1号とも呼べるものの誕生-

 基本技術確立の時代と常識打破の時期

商品化への時代

 デュポンの失敗とハイテラック問題

 トップの決断とゴー・サイン

 世界に前例のない革新プロセス完成への昼夜を問わない奮闘

 エクセーヌの完成発表

 皮の本場・欧州へ上陸

 業界への影響と波及効果


今、振り返って

何が開発を困難にし、何が成功に導いたか

 開発途上の壁と直面した障害

 エクセーヌ開発の成功要因

技術障壁打破の経験則


第2章

日本のものづくりの原点 たたら製鉄

木原村下による砂鉄投入
(砂鉄と木炭は、交互に30分おきに投入される)

(公財)日本美術刀剣保存協会
日刀保たたら村下
国選定保存技術保持者 木原 明氏
  2008 年12月12日


はじめに

たたら操業口絵

たたら製鉄の概要

はじめに「日刀保たたら」の復活

たたら製鉄の原理

-千年以上前から基本理念としていた自然の再生とリサイクル-

湯路から炉内を窺う木原村下
(炎の色、砂鉄のシジレル音
などで炉内の状況を感じ取る)

千年以上に亘って培われて来た先人の知恵と技の結晶「たたら製鉄」


 現代のハイテクをもっても作れない玉鋼

 -解明されていない玉鋼生成のメカニズム、ものづくりの原点-

 奥出雲に伝わる製鉄伝説

 奥出雲で多く産出された純度の高い真砂砂鉄

 江戸時代の「たたら」技術の発展、奥出雲が製鉄の中心地へ

 洋鉄に押されて消えていった「たたら製鉄」

 -それでも先人の知恵と技を残そうとした人々-

「日刀保たたら」復活の大功労者 安部由蔵村下

-玉鋼でしか現せなかった日本刀の美-

 私と安部村下、「たたら製鉄」との出会い


たたら製鉄法

湯路を拡げる

 たたら製鉄は、一に砂鉄、二に木山、三に元釜土

 築炉

 木呂管(送風管)の設置

炉床と大規模な地下構造

操業

 人間の五感を総動員して炉内の変化を読み取る

 ノロの出方で操業状況を判断

 3日目30センチ巾の鉧(ケラ)が1メートル巾に成長

釜崩し・鉧出し

 高殿(たかどの)から引き出された鉧の破砕・選別、玉鋼の誕生


たたら製鉄における原材料

良質の大量の砂鉄の産出がもたらした奥出雲の製鉄事業

砂鉄と採掘法 鉄穴流(かんななが)し

木炭

釜土


鉧の生成と「たたら製鉄」における先人の知恵

徹底した科学調査でも未解明に終わった「たたら製鉄」のメカニズム

-三現主義、これこそが古代の驚嘆すべき “ものづくり” の原点-

先端技術を駆使しても成し得なかった「玉鋼」の生成


村下の技術と伝承
姿を見せた鉧(ケラ)

村下の技術と伝承

 原材料の調整、原材料に合わせた炉づくり

村下に求められる不可欠の能力

炉内の状況判断と村下の対応

 火の道に風を通す

 ノロの出方、砂鉄が適所に適量入っているか

 “種すき” さばきが村下の最も重要な技能の一つ

 大事な炭の焼き方と置き方、時々刻々のホド穴の調整

 一番大事な湯路ボセの出し方


生まれたばかりの鉧(ケラ)
縦2.8m、横12m、重さ3t
鋼造(かねつくり)による選鋼

たたら作業者が携る一年間の仕事

後継者の養成

日立金属の全面的な支援


玉鋼四方山(よもやま)話

玉鋼の品質を生み出している組成的特長

 純度の高さ

 玉鋼の大きな特長 完全に熔解し切っていない玉鋼

古代・中世の和釘に替わって使われる国宝修理の際の「和ズク」

日本刀の作刀技術と密接不離な玉鋼の特徴

 玉鋼に現れる様々な地肌と微量に含まれるパイライトの特殊機能

 平安から鎌倉にかけて既にあった複合的機能を持たす作刀技術

安部由蔵村下から学んだ「ものづくり」と「人づくり」

誠実が美鋼を生む


最後に

先人が培って来た五感を駆使した知恵の結晶と、今日のハイテク

-現代の最先端の科学技術をもってしても生成出来ない玉鋼-

永田和宏先生による 「現代におけるたたら製鉄復活」への挑戦


たたら製鉄から考える今後日本のものづくりの方向

(公財)日本美術刀剣保存協会 たたら・伝統文化推進課長 黒滝哲哉氏


はじめに

たたらの歴史 -日本型もの作りの一類-

松江藩の事業・環境政策と江戸時代の自然再生思想

「たたら製鉄」に見る日本の「もの作り」思想と過当競争を回避していた日本の産業政策

 現代の工業基準、経済合理性の外にあった「たたら製鉄」の基準

 優勝劣敗の意識を持ち込んでいなかった「たたら製鉄」における「競争」

森林保護と再生思想の下で進められてきた「たたら製鉄」

「たたら」を支え、発展させてきた人々

高炉転換で消えた「たたら製鉄」と、高まったその復活の気運

GHQによる戦後日本刀の作刀禁止令と、「たたら」再復活への道程

戦後「たたら」の復活、国選定保存技術へ


まとめ  -現代日本のものづくりへの再考-

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